日本オラクルは8月10日、仮想化環境においてJavaアプリケーションを実行するための「Oracle Virtual Assembly Builder」および「Oracle WebLogic Suite Virtualization Option」と、インメモリデータグリッド製品の最新版「Oracle Coherence 3.6」を発表した。インメモリデータグリッド製品とは、複数のハードウェアにて構成されたサーバ群で仮想的な共有メモリ領域を確保し、大量のデータを高速処理する製品のことだ。
日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部長の龍野智幸氏は、「基幹系システムにパブリッククラウドのメリットを取り入れることで、より進化した企業情報システムが実現する」と話す。そのような企業内クラウドプラットフォームに求められることとして龍野氏は、レスポンス時間の向上やアプリケーションの可用性、負荷の制御などの弾力性、サーバ仮想化環境における処理性能、管理作業の簡素化、アプリケーション構成作業やハードウェア保守などの迅速化といった要件を挙げ、今回発表した新製品がこうした要件を満たすものだとした。
Oracle Virtual Assembly Builderは、ウェブサーバ層やアプリケーションサーバ層、データベース層などの複数層にまたがるシステム全体の仮想マシン群を作成し、プロビジョニングできる製品だ。既存のソフトウェアコンポーネントの設定情報を自動的に取得し、独立したブロックとして必要な製品やサービスをパッケージ化するためのフレームワークを提供する。同製品を用いることで、管理者はパッケージ化したアプライアンスコンポーネントを組み合わせ、システム規模の大小に関わらず複数層にまたがるアプリケーション構成を設計、展開できる。
Oracle WebLogic Suite Virtualization Optionは、「Oracle WebLogic Server」と「JRockit Virtual Edition」を組み合わせたものだ。Oracle JRockit Virtual Editionは、TCP/IP、ハードウェアデバイスの連動、ファイルI/O、プロセススケジューリングなど、OSとしての基本的な機能を内包したハイパーバイザ上で直接稼働するJava VM。エンタープライズJavaアプリケーションにとって重要ではないOSの機能を排除することで、ハードウェアリソースや管理作業負荷が軽減できるという。
これにより、同じハードウェア上における通常のサーバ仮想化環境よりも多くのアプリケーションサーバが稼働でき、一般的なOS上での展開に比べ仮想化Javaアプリケーションのパフォーマンスを30%向上できるという。Oracle JRockit Virtual Editionを利用することで、Oracle WebLogic ServerはOSがなくとも「Oracle VM」上で直接実行できるようになる。
一方、Oracle Coherence 3.6は「Oracle Fusion Middleware 11g」の主要コンポーネントのひとつ。強化された機能としては、SQLに近いクエリ言語「Coherence Query Language」のサポート、グリッドやクラウド環境においてサービスに必要なサーバの容量などをポリシーに応じて制御するといった自律的管理機能、Microsoft .NET Frameworkベースのウェブアプリケーションでのセッション管理のサポート、分散トランザクションのサポートを備えたMulti-Version Concurrency Control(MVCC)の採用などだ。
Oracle Virtual Assembly BuilderとOracle WebLogic Suite Virtualization Optionは、すでにパートナーや一部の顧客に対し、限定的に提供を開始しているという。Oracle Coherence 3.6は、既存環境への適用支援プログラムを計画中で、9月に正式リリースが予定されている。