Windows Server 2003から2008 R2への更新で7700万円のコスト削減が可能--ITR

富永恭子(ロビンソン)

2010-09-24 15:54

 アイ・ティ・アール(ITR)は9月24日、Microsoft社の最新のサーバOSである「Microsoft Windows Server 2008 R2」の新機能によるコスト削減効果の試算調査結果を発表した。

 同社の2008年の調査では、現在の企業におけるITインフラは、IAサーバとWindows Serverの組み合わせが主流で、企業が最も利用しているサーバOSとしてはWindows Server 2003が部門サーバで55%、基幹業務用サーバでも34%で最多となった。このことからITRでは、サーバOSのリプレースがどの程度のコスト削減効果をもたらすかのシミュレーションを行った。今回のシミュレーションでは、企業がサーバのハードウェア更新を行う際に、Windows Server 2003をそのまま継続利用するモデルと、OSをWindows Server 2008 R2に更新するモデルを比較している。

 また、ITRの「IT投資動向調査2010」(2009年秋実施)では、企業が着手する予定のコスト削減策として「既存システムのSaaS、クラウドサービスへの移行の検討」、「ITに関わる電力消費の削減」、「サーバなどハードウェアの統合、整理」が上位3項目として挙げられている。これを踏まえ、今回の調査ではWindows Server 2008 R2に更新するモデルにおいて、企業がコスト削減策として着手しようとしているITの電力消費削減とサーバの統合、整理に有効と考えられる点に着目したという。

 具体的には、「同OSの新機能を利用したHyper-V2.0によるサーバ仮想化」、「コアパーキングによるマルチコアプロセッサでの電力消費削減」、「FCI(File Classification Infrastructure)機能によるファイルサーバのストレージ使用効率の向上」について、5年間のTCOを比較した。その結果、Windows Server 2003を継続利用したモデルAに比べ、Windows Server 2008 R2への更新を行ったモデルBは、5年間で約25%、金額では約7700万円のコスト削減が可能で、Windows Server 2008 R2の導入はTCOの観点から有効であることが明らかになったとしている。

図1 5年間のTCO比較(項目別) 出典:ITR

図2 5年間のTCO比較(年次別) 出典:ITR

 なおTCO算出においてITRは、ハードウェア購入費用(サーバ、ネットワークストレージ)、ソフトウェア購入費用(OS、仮想化ソフトウェア、管理ソフトウェア)、初期設定費用、システム移行費用、ハードウェアの保守契約費用、電力、設置スペースコスト(レンタルラック費用)、運用管理費用(OS、ミドルウェア、ハードウェア)の各項目と、ディスク増加コスト(ファイルサーバで管理するオフィス文書ファイルの増加によるハードウェアの増加コスト)を加えた9つのコスト項目を設定した。2つのモデルで使用するハードウェアは同一機種とし、資産を現実と近い結果とするために運用管理ツールとして「Microsoft System Center」を両モデルで採用したとしている。

 ITRは、企業が抱えるITインフラに関する課題として、コスト削減が重要視され、最近ではその施策としてクラウドコンピューティングの利用が注目されているが、企業全体のITに関するコストパフォーマンスを向上させるためには、単にクラウドへの移行だけでなく、社内システムも含めた自社のITインフラ全体の再整備を考えることが重要だとしている。また、クラウド時代になっても、効率的なITインフラを考えるうえでサーバOSが最も重要な対象であることに変わりはないと分析している。

 また、サーバの更新を考える場合、OSを最新バージョンに更新しなければ、最新のハードウェアの性能を十分に利用できないことも事実だとした上で、ITRでは「短期的にはOSライセンス費用などでコストが増加しても、5年という期間で考えればコストの低減とより効率的なITインフラを入手できる可能性がある」としている。したがって、IT部門では変化によるリスクを恐れずに、技術や製品の進化によるメリットを検証し、より効率的なITインフラによってコスト削減とビジネスの変化に対応するという2つの課題に積極的に取り組むことが重要だとしている。

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