中国のセキュリティベンダー緑盟信息技術(NSFOCUS Information Technology)は1月20日、日本法人としてNSFOCUSジャパンを1月15日付けで設立したことを発表した。NSFOCUSにとって初めての海外拠点になるという。
NSFOCUSは2000年4月設立、現在の従業員数は約850人(2010年12月現在)。北京市に本社があり、上海や広州、成都、西安など7支店、31拠点を抱える。セキュリティアプライアンスとして不正侵入防御(IPS)「NSFOCUS NIPS」シリーズ、ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)「NSFOCUS WAF」シリーズ、分散型サービス妨害(DDoS)攻撃を防御する(Anti-DDoS System:ADS)「NSFOCUS ADS」シリーズを開発、提供している。
これらのアプライアンスとは別に、脆弱性を診断するソフトウェア「NSFOCUS Remote Security Assessment System(RSAS)」も開発、提供。このRSASを活用したウェブアプリケーション診断やプラットフォーム診断、セキュリティアプライアンスの運用を代行し、24時間365日セキュリティの状況を監視する「SOC(Security Operation Center)」などのサービスも提供している。
中国内の主なユーザー企業としては、中国電信(China Telecom)や中国網通(China Netcom)、中国移動通信(China Mobile)などの4大通信事業者(キャリア)、中国人民銀行や中国建設銀行、中国農業銀行、中国工商銀行といった主要金融機関、このほかにもエネルギー企業や大学、政府機関などという。
NSFOCUSの副社長を務める呉云坤(Wu Yunkun)氏は社名について「Network SecurityにFocusする企業という意味で“NSFOCUS”にした」と説明する。同社の売上高は「40%ずつ伸びており、(直近の決算となる)2010年12月期の売上高は4億元(約50億円)」としている。
同社は「2006年からグローバル化を目指している」という。「今日受けた攻撃が次の日には世界に広がる。セキュリティに地域性はない」として、世界の企業に「最高のセキュリティソリューションを提供していく」ために、2011年からグローバル戦略を本格化させている。今回の日本法人設立はその第1弾であり、第2弾として北米法人を1月末までに設立する予定。第3弾としてシンガポール支店を2011年内に立ち上げる計画を明らかにしている。
日本法人は販売機能がメインだが、日本国内のユーザー企業からのノウハウのフィードバック、北米法人は販売機能とともに研究拠点、加えて、技術動向把握といった目的も持つ。シンガポール支店は東南アジア市場への足がかりにする考えだ。
NSFOCUSジャパンの代表取締役会長は中国本社の最高経営責任者(CEO)の沈継業(Shen Jiye)氏が、代表取締役社長はソニーやネットマークスなどでセキュリティ事業を経験している栗原章通氏が務める。栗原氏はNSFOCUSジャパンの設立趣旨を「中国と日本の協業」という言葉で表現している。
「GDP(国内総生産)の第2位である中国と第3位の日本が協業する。中国のダイナミズムやスピードと、日本が持つきめ細やかさとこだわりを融合させる」(栗原氏)。また栗原氏は「中国はネットワークセキュリティ先進国であり、その高い技術レベルを日本にもたらしたい」と説明。一方「日本にはクラウドコンピューティングや仮想化技術、SaaSなど先進のビジネスモデルがある。これを中国にもたらしたい」との意欲を見せている。
栗原氏はNSFOCUSの強みとして研究開発を挙げている。NSFOCUSは、攻撃者の侵入方法やマルウェアの振る舞いを調査、分析、研究するための“ハニーポット”を中国国内30カ所に設置しており、常に最新の検体を収集、分析しているという。また「売り上げの20%を研究開発に投資している」(栗原氏)ことも、研究開発の強みになっていると説明している。
NSFOCUSの強みとしては、主要ITベンダーとのパートナーシップも挙げている。Hewlett-Packard(HP)やCisco Systems、Juniper Networks、Microsoftなどとパートナーシップを組み、脆弱性の発見に寄与しているという。また、NSFOCUSは、2008年の北京五輪や2010年の上海万博といった国家プロジェクトで、SOCの運用やセキュリティ保全に貢献したことも強みになっていると栗原氏は説明している。