IDC Japanは、国内ITサービス市場でのベンダー売上を産業分野別に調査し、競合状況をまとめた。
調査対象となった産業は、「金融」「製造」「流通」「通信およびメディア」「政府および公共」「その他」の6つ。調査結果によると、2010年3月期のITサービス売上におけるトップ5ベンダーは、富士通、NEC、NTTデータ、日立製作所、IBMで、5ベンダーが全ての産業分野でトップ10に入る高いプレゼンスを持ち、そのうちの3つの産業分野ではトップ5を占める結果となった。
IDCは2010年3月期について、2008年秋以降で景気後退局面の影響をもっとも強く受けた1年と説明。その上で、調査対象のトップ10ベンダーの過半数は、全ての産業分野において前期比マイナスの成長を余儀なくされたとしている。そのため、プラス成長となったのは、金融分野でのIT投資動向の変化を捉えたベンダー、政府および公共で確実に売上を伸ばしたベンダーなど、ごく一部にとどまった。
トップ5ベンダーには、金融、政府および公共の売上全体に占める割合が高い傾向にあるという。特にベンダー間で違いがみられた金融が、全体の業績を大きく左右したとIDCでは分析している。中でも、地銀向けの共同アウトソーシング需要や、証券および保険などの需要拡大を的確に取り込んだベンダーが業績を伸ばした。
また、市場規模の大きい製造については、売上でトップ10にランクインした全てのベンダーが前年同期比でマイナス成長となり、厳しい経済環境を反映する結果になった。しかし、比較的不況に強いアウトソーシング事業により、減少幅を最小限に抑えるベンダーが見られるなど、マイナス幅に違いが見られた。このことから、IDCでは製造が全体業績に及ぼした影響も大きくなったとIDCはみている。
一方、景気の先行き不透明感は依然として継続しているものの、一部の企業では底を打つ兆しが見られるという。IDCでは、今後のIT投資は緩やかに回復が進む見通しだが、各産業分野、各企業によるバラつきは大きく、業績の回復後も2008年以前のようなIT投資に戻ることは考えにくい状況にある予測している。
IDC Japan ITサービス リサーチアナリストの植村卓弥氏は「ITサービスベンダーは、短期的には数少ない成長分野や政府および公共などの堅実なIT投資が見込める分野を確実に捉えることが重要になっている。しかし、中長期的な視点に立った場合、注力する産業分野において、自らがユーザー企業成長のドライバーとなって、新たなIT投資需要を作り出すことも必要になる」とコメントしている。