IDC Japanは3月31日、国内ITサービス市場における国際会計基準(IFRS)関連サービスの動向を調査し、ベンダーの取り組み状況とユーザーの動向についてまとめた結果を発表した。
これによると、国内企業におけるIFRSへの対応は、いまだ会計方針の策定前の段階にあり、システムへの投資が開始される段階には至っていない企業が多い事がわかったという。
IFRSへの対応は、製造、流通業を中心としたグローバル展開に注力する企業と、金融や電気、ガスなどの公益事業に代表される会計基準上の対応ボリュームの大きい企業などで先行しているという。4月以降、まずこれら一部の先行企業のシステム投資が開始すると見られる一方で、それ以外の標準的な上場企業における対応は、強制適用時期が決定するとされる2012年をにらみながら進むと、IDCでは見ている。ただし、先行企業のシステム投資額は相対的に大きくなるため、IFRS関連ITサービス市場としては2011年から徐々に拡大すると予想している。
また、上場企業および上場企業の連結対象となる企業を対象としたユーザー調査の結果からは、情報システム対応の着手時期を「未定/分からない」とする企業が42%を占めるなど、現時点でも対応の明確な方針が定まらない企業が多く見られ、強制適用直前に対応を行う「駆け込み」型の企業の数が多くなることは避けられない見込みだとしている。こうした状況から、ユーザー側だけでなくベンダー側においても、ピーク時の対応人材の不足が懸念されるという。
IFRS対応プロジェクトでは、初期段階では「制度対応」として最小限の対応で乗り切ろうとする企業も多く、強制適用が実施される場合にも、こうした企業は多数派になると考えられる。一方で具体的な検討段階に入ると、決算業務の迅速化の必要性やグループ経営管理基盤の強化の重要性を認識し、グループ全体で会計、基幹システムの見直しを図るなど、プロジェクトの規模が拡大していくケースがあると予測している。
IDC Japan、ITサービス リサーチアナリストの植村卓弥氏は「ITサービスベンダーは初期段階でのユーザー企業の対応方針に合わせたサービスを提供するだけでなく、その過程で顧客との強固な関係を築き、企業にとって最適なタイミングで追加のシステム投資を提案するなどの柔軟な対応が必要になる」とコメントしている。