マテリアルハンドリング企業のダイフクは、各事業部の生産管理システムなどとERPをつなぐデータ連携基盤としてビーコンITの「BeaconIT Data Integration Suite(BDIS)」を採用した。同社ではこれにより、グローバル対応の強化、経営の数値の見える化を目的とした新基幹システム構築プロジェクトで、ERPを中心としたシステムを完成させたという。
ダイフクによる新基幹システム構築プロジェクトは、2007年にキックオフし、「グローバル対応」「経営数値の見える化」「脱メインフレーム」を目標として、2010年4月にビッグバン型でカットオーバーした。新システムはERPを中心に、メインフレームで処理していたほぼすべての業務を継承し、各事業部の生産管理システムとデータ連携して業務運用している。
BDISの導入に先立ち、ダイフクでは2003年よりメインフレームのデータを抽出、クレンジングして情報系に渡すツールとして「Waha! Transformer」を採用していた。しかし、ERPの導入決定によって、既存データの大量移行処理に加え、各事業部やグループ会社の仕組み、社内のデータウェアハウスやワークフローなど、連携すべき周辺のシステムが山積したという。当時、必要とされたシステム間のデータ連携の種類は170ジョブ、日中も頻繁にスケジュール連携し、中にはほぼリアルタイムに近いものもあったため、データ量は月次で数十万件に及んだ。
この状況からダイフクは、開発による対応は無理だと判断。EAI(Enterprise Application Integration)の検討に入った。当初、ERPベンダーはEAIに不安を示したが、日本製品であること、実績、費用対効果、操作性などの観点でEAI製品を比較検討した結果、約1カ月の試用の後、BDISの導入を決定したという。オプションとしては、「SAP Adapter」を導入している。
導入にあたっては、既存のメインフレームから、生産管理以外のすべての業務を網羅した約300本のデータを移行した。またERPと周辺のデータ連携は、グループ会社や取引先を含めたほとんどすべての業務システムとつないだとしている。つないだジョブは117種類、データボリュームの月間平均は、2.7Gバイトになったという。
一方、プロジェクトの途中から、内部統制対応のため、ERP内に購買、販売など社内の承認処理を持たせるのは機能的にも難しくなり、ワークフローを別システムとして構築することになった。時期により処理の繁閑もあるが、平均して2分間に1回のデータ連携をBDISで処理しているという。また、BDISのモジュールとして、ほぼリアルタイムな業務は「DataSpider」がデータを連携し、「Waha! Transformer」で前後の処理や大量バッチ処理を実行している。
このプロジェクトでは、それぞれの特性を活かした構築と快適なアプリケーション環境をサポートするため、これら機能別の最適配置の見極めと、標準化に時間をかけたとしている。また、インターフェース設計のルール策定および共通部品の作成や、連携のための基準書をまとめたことで、開発の生産性も格段にアップしたという。
通常のERPのアドオン開発やデータ処理のプログラミングで対応していた場合、約66人月の期間が必要なところ、今回のプロジェクトでは、BDIS導入により、ERPデータの抽出、加工処理だけで工数を約2分の1に削減したとしている。
ダイフクでは、2010年度中にグループ会社でのERPの導入がスタートしたが、本社とグループ会社間のERPをつなぐ処理にもBDISが活用されている。今後は、ERPのデータをさらに経営に活用するため、今後検討するクラウドサービスなどの外部との接続にもBDISを活用する考えだ。また、社内に散在するExcelデータもレガシーの一部として、統合を模索するとしている。