復興とビジネスの間でIT企業の営業が考えていること--本誌アンケート調査

冨田秀継 (編集部) 2011年05月11日 18時19分

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 東日本大震災の影響で、ビジネス上のマイナス懸念を持つ読者が6割近くに上った。ZDNet Japanが実施した緊急アンケート調査で明らかになった。

 このアンケート調査は、5月9日に開催されたイベント「緊急営業会議:3.11後のITビジネスと営業の役割」と連動して実施した。アンケートの設計にあたっては、ノークリサーチ代表取締役社長の伊嶋謙二氏を中心に、同イベント発起人の協力を得た。アンケートは4月25日から5月6日にかけて実施し、130人から回答を得ている。

 イベントの趣旨の通り、回答者の多くがIT営業やソリューション営業に携わっている。

 特集「3.11後のITビジネスと営業の役割」の第1回となる本稿では、このアンケート調査の結果を紹介する。イベントの詳細なレポートは後日追って掲載したい。

設問1「東日本大震災は、4月以降のビジネスにどの程度影響を与えると思われますか?」

東日本大震災は、4月以降のビジネスにどの程度影響を与えるか※クリックで拡大画像を表示 東日本大震災は、4月以降のビジネスにどの程度影響を与えるか※クリックで拡大画像を表示

 設問1に対する回答では、「影響は大きく、ビジネス上のマイナス懸念がある」が最多の74人、続いて「震災はむしろビジネスを生み出している」が30人、「震災に関係なく景気の状況は良くない」が22人、「震災に関係なく景気の状況は良い」が2人という結果となった。

 全体(130人)の56.9%がマイナス懸念を持っていることがわかる。

設問2「具体的にはどのようなマイナス面でしょうか?」

 設問2では、設問1でマイナス懸念があると回答した人(74人)を対象に、自由回答形式で具体的なマイナス面をたずねた。その中から、編集部がテーマごとに取りまとめた回答を記す。なお、誤字脱字などの修正に加え、重複している回答をまとめるなどの編集を加えてある。

実際のケース

  • 震災前の案件の検討が中止されたり、予算凍結、削減という指示が出ている
  • 取引先でプロジェクト凍結となった案件も出始めている
  • 被災地区の書類が揃っている未入金が、1000件を超えている
  • 計画停電の影響で、生産が減少した製造業からの受注予定の案件が凍結された
  • お客様(SIer)の先のお客様(製造業、流通業)で、サプライチェーン寸断によるビジネス悪化が発生。その結果、投資案件がいくつも凍結、延期されている
  • 顧客の業界でサプライチェーンに問題が出ており、この先受注で問題が発生するのは間違いない
  • 複数の大規模プロジェクトが中断もしくは消滅した
  • サーバ移設プロジェクトが計画停電エリアにかかり、消滅した
  • 東北地域にある工場が被災して、一部製品の出荷が滞っている
  • 自粛ムードと景気先行き不透明により、多くの大型IT投資にストップがかかっている
  • 顧客の心理に暗雲が広がっているのが多少なりとも伝わってくる。その結果、こんな時期だから……と、遠まわしに提案を断られている

IT投資の優先度の変化

  • 震災によるBCP対策の需要は一時的に増加するものの、被災企業は復興費用を優先する
  • 震災の影響を把握できない現状では、不急不要の投資が凍結、延期される傾向にある
  • 首都圏の企業であっても、システム投資に慎重になる恐れがある
  • 設備等の復旧に投資が必要となり、ITへの投資は後回しになる可能性が高い

IT市場の変化

  • 景気減退によってIT投資の比率が低下する可能性が高く、市場が小さくなる可能性がある
  • 投資よりもコスト削減を優先するため、サービス市場全体の縮小につながる
  • プロジェクトの延伸や中断によるエンジニア過多が予想され、単価下落や予算縮小になる

各業種の変化

  • 部品入荷遅れで大幅生産減を受けた企業の計画見直しにより、取引遅れが多く発生している
  • コピーなどOA機器の生産に支障があり、顧客の希望通りに納品できない可能性がある
  • 被災製造ライン修復費用確保のため、顧客のIT投資予算の保留または縮小
  • ハードウェア販売では、7月以降の供給不足で入荷不足や品質低下を懸念している
  • 公共セグメントの仕事をしているが、補正予算が固まるまで予算の執行可否が見えない
  • リーマンショック以降、SAP業界は案件が減り、単価の下落もあって、しばらくは悲惨な状態だった。しかし、今年4月から始まる案件がかなり多く、3月から各社は人材を確保してSAP市場復活を見込んでいたが、大震災によるプロジェクトの延期または中止という情報が増えてきた。また冷え込むのではないかと懸念している。
  • 生・損保業界では、地震保険による支出の影響により、 IT投資抑制の動きになると思われる
  • 保険業の顧客は、 震災の影響で2011年度計画の見直しを行っている
  • 東電グループのIT投資大幅抑制、東電株主のIT投資抑制
  • 国のIT予算も復興が優先されるため、官公庁案件が縮小

マインドの変化

  • お客様の予算執行に関する意思決定に、遅れが出ることが懸念される
  • 最終意思決定者が、金額の大小に関わらず経営層に上がってきている
  • 顧客のビジネスのスピードが落ちており、この点で大きなマイナスを受けていると思う
  • 首都圏の電力供給の先行き不透明感や事業継続への影響、製造業の操業減少による供給不安定化による市場への影響などは、復興特需を上回ると感じている
  • BCP対応でプラス要因もあるが、不透明なマイナス要因の方がはるかに大きいと想像される

設問3「具体的にはどのような面でビジネスを生み出しているのでしょうか?」

 設問3では、設問1で「震災はむしろビジネスを生み出している」と回答した人(30人)を対象に、自由回答形式で具体例をたずねた。下記はその具体例だが、設問2と同様に編集を加えている。

実際のケース

  • クラウドの導入、バックアップサイトの構築や強化などの商談が出てきている
  • セミナー集客が伸び、試用版ダウンロード数も2倍以上に
  • 既存案件でもDR/BCPを必須要件として規模が拡大している
  • 問い合わせが増えたケースも多く聞く。特に拠点間のソリューションやセキュリティ、クラウド
  • 見せかけの対策を実施し、株主に災害対策をアピールする目的のみの企業も少なからずある
  • データセンター、コールセンターの移転検討、およびバックオフィス機能を海外に移転するBPOの検討依頼が増加している
  • BCP/DR案件にクラウドがからみ、引き合いが目に見えて増えている

見通し

  • 計画停電内ローカルシステムの計画停電外DCへの移設
  • 省エネ効果のある最新の家電やパソコンを利用する風潮が生まれつつある
  • BCP観点のシステムの在り方など災害対応の意識が高くなり、IT投資の追加検討も始まっている
  • 在宅勤務関連ビジネスや時短に伴う業務効率化ツールなどの注目度が増し、需要が増えそう

その他

  • 緊急連絡インフラとしてのFAX一斉配信の利用がここまで増えるとは思わなかった
  • Facebookが震災の時に役立ったことを実感している人が情報発信することで、ソーシャルメディアのビジネス化が進む

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