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富士通のクラウドは本当に「コアビジネス」になるのか

大河原克行

2011-06-22 08:00

 富士通が、連結営業利益率で5%超、海外売上高比率40%超を目指す新たな経営方針を発表した。

 富士通の山本正已社長は、最初の説明段階では「早期に達成を目指す目標」として、具体的な達成時期を明確にはしなかったが、記者からの質問に答える形で「私は3カ年計画というイメージを持っており、2013年度に連結営業利益率5%達成を目指したい」と言及した。

 だが、具体的な売上高、営業利益などの数値目標は明らかにせず、長期の成長ビジョンとして掲げた連結営業利益率10%超、海外売上高比率50%超のほか、フリーキャッシュフローで1500億円超の安定的創出といった目標の達成時期にも言及することはなかった。

富士通代表取締役社長 山本正已氏 富士通代表取締役社長 山本正已氏

 そして「クラウドのコアビジネス化」を掲げ、2010年度には380億円強の国内クラウドビジネスの売上高を、2011年度には1000億円規模にすることを明らかにしたものの、「数字は明確ではないが、2013年度には少なくとも3000億円を超える規模を目指す」と述べるに留まり、3年後の具体的な数値目標には触れなかった。

クラウド売上が3000億円でも全体の1割以下、これでコアビジネスか

 山本社長が明確な数値目標に言及しなかったのにはいくつかの理由がある。

 ひとつには、「東日本大震災の影響を確実に見切れていない」(山本社長)という点だ。

 東日本大震災以降、企業IT投資は明らかに先送り傾向が出ている。戦略的IT投資よりも、優先的に投資しなくてはならない復旧や復興向けの案件が山積しているからだ。とくに富士通が得意とする公共分野のIT投資は、すでにかなりが先送りになっているのが実態だ。

 2011年度には震災の影響によって純利益ベースで240億円の影響を見込んでいるが、今後の復興需要の立ち上がりがどうなるかは未知数。全国に広がろうとしている電力不足の問題も少なからず影響することになるだろう。そうした要素を捉えれば、まだ読み切れないというのは確かである。

 「早期達成目標は、スタートとなる2011年度次第」というコメントも、震災影響を加味したものである。

2011年度の業績予想※クリックで拡大画像を表示 2011年度の業績予想※クリックで拡大画像を表示

 もうひとつは、山本社長が社長就任直後の2010年7月に発表した3カ年の中期経営計画を、わずか半年後の2011年1月に「これをリセットする」と発言した「前科」がある点だ。

 市場の先行きが不透明である点、さらに不採算プロジェクトの削減という大きな課題に引き続き挑んでいること、成長戦略のドライバーである海外事業についても、いまだ体制整備や投資段階にあるという点などを考えれば、中期の成長にも不安定要素があちこちにみられる。

 そして、「コアビジネス化する」と位置づけたクラウドビジネスも、2011年度で1000億円という規模では、全社売上高見通し4兆6000億円(2011年度)と比較すれば、とてもコアビジネスとはいえない水準。2013年度でも1割以下の売上高規模に留まり、さらに収益性ではこれを下回るとみられるだけに、クラウドによる業績への成長貢献は事実上、不可能といえる。

 一方で、PCで年間1000万台、IAサーバで年間50万台という中期的な出荷目標は、現時点ではPCで660万台、IAサーバでは40万台の2011年度計画とトーンダウンしているが、山本社長自身としてはこの旗印を下ろすつもりはないようだ。しかし、その点でも姿勢を言葉としては明確にはしなかった。

攻めの姿勢を崩さない山本社長

 だが、山本社長は、説明の上では、攻めの姿勢を崩していない。

 2011年度以降のグループ基本戦略で、山本社長は「攻めの構造改革」「真のグローバル化の加速」「新しいサービスビジネス」の3つを成長テーマにあげる。

富士通グループの基本戦略※クリックで拡大画像を表示 富士通グループの基本戦略※クリックで拡大画像を表示

 クラウドに関しても、2011年度には1000億円強のクラウド関連投資を予定。2011年末までに全世界で5000人のクラウド人材の育成に取り組み、「クラウド重点市場攻略に向けたスピードアップにより、商談数、受注件数の拡大によって市場を一気に囲い込み、クラウド市場におけるトップのポジションを盤石なものにする」と語る。

 また、攻めの姿勢は「2008年以降の増益基調を加速し、過去最高益の早期更新へ道筋を固める」という言葉からも感じ取れる。

 とはいえ、具体的な数字がないだけに、掲げた方針には残念ながら迫力が欠けていたのは事実だ。

 この中期的な方針の成果を証明していくのは、やはり数字になる。どんな数字を達成して、富士通の攻めを表現するのか。

 数字を語らなかった迫力のなさを払拭するには、我々が思う以上の数字で証明するしかないとも感じる。

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