東京農工大学は学生や教職員1万1000人が利用する教育用情報システムをプライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドで全面刷新、2月から稼働させている。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が7月4日に発表した。
教育用情報システムは、教育システムやインターネット情報システム、統合管理運用システム、統合ストレージ、図書館システムなどのサブシステムで構成されているが、アプリケーションやサービスが次々に追加されることで、管理負荷が増大していたという。新システムでは、大学固有のシステムはプライベートクラウド、メールはパブリッククラウドと、各システムに最適な方式を利用して、適切に運用することで運用負荷を軽減したとしている。サーバ台数や消費電力はともに半減することに成功したという。
プライベートクラウドは、シスコシステムズのIAサーバ「Cisco Unified Computing System(UCS)」、EMCジャパンのユニファイドストレージ「Celerra NS-480」、ヴイエムウェアの仮想化ソフト「VMware vSphere」を組み合わせて構築。仮想化環境に最適なコンピューティング基盤という、このシステムはサーバやネットワーク、ストレージなど個別の最適化ではなく、IT基盤環境全体を最適化することで運用効率向上、コストやスペースの削減に貢献できるとしている。
デスクトップ環境のクラウド化では、デスクトップ環境を仮想化する「Virtual Desktop Infrastructure(VDI)」方式を採用、仮想デスクトップソフトウェア「VMware View」を導入している。3次元CADや技術解析ソフトウェアの仮想環境上での利用を530台あるすべてのクライアントマシンから利用できるという。
図書館システムもパッケージを刷新しプライベートクラウド上に構築している。既存システムのデータベースを移行し、将来の学術認証フェデレーション対応に向けた基盤として「Shibboreth認証」を実現しているという。Shibboreth認証は、国立情報学研究所が推進する学術認証フェデレーションの基盤となるミドルウェア。
メールシステムには、CTCが提供する教育機関向けメールサービス「A-Cloud Mail」を採用。自前で保有していたメールサーバを撤去し、学生と教職員1万1000人がA-Cloud Mailに移行している。A-Cloud Mailは、入学や卒業などで毎年度利用者が入れ替わるなど、企業とは異なる運用が展開される教育機関の利用形態にあわせている。CTCのデータセンターで稼働しており、停電などの影響を受けずに24時間365日、学内外を問わずいつでもメールを利用できるという。
東京農工大は今後、クラウド基盤を生かして事務システムも刷新し効率化していくという。将来的には学内のプライベートクラウドから拡大し、近隣の国立大学との大学間クラウドを展開していく予定としている。