日本オラクルは、複数の記憶媒体を最適配置し、コストや使用電力を抑える手法とともに、テープストレージを有効活用していくことを提案した。8月29日に開催されたストレージ製品に関する説明会で事業戦略を示している。
企業が扱わなければならないデータ量は驚異的な勢いで膨張し続けている。IDCの調査によれば、2010年に新たに創出されたデジタルデータは1200エクサバイトだったが、2020年には3万5000エクサバイトにまで拡大するという。これらを適正に活用しなければ競争力に影響が出てくる可能性があるため、巨大データを使いこなす要として、ストレージの重要性がいっそう高くなってきている。
米Oracleは、旧Sun Microsystemsを統合してストレージ製品体系を強化した。独自製品のデータベースアプライアンス「Oracle Exadata Database Machine」を中核に、NASの「Sun ZFS Storage Appliance」を擁する。さらに、2011年6月にストレージベンダの米Pillar Data Systemsを買収、SANの「Pilla Axiom」もポートフォリオに加わった。テープストレージでは、やはり旧Sunの「StorageTek」がある。
同社が、爆発的なデータ膨張時代を担う基幹的ストレージと位置づけているSun ZFS Storage Applianceは、「管理が容易で、省電力性が高く、拡張性が良いこと」(日本オラクル システム事業統括 ビジネス推進本部 プリンシパル ・セールス・コンサルタント 寺島義人氏)が特徴だという。
寺島氏は「管理ツールは直感的な操作性を備えており、ストレージ容量やネットワークの状態をリアルタイムで、さまざまな切り口で監視することができる。これによりチューニングがしやすくなっている」と話す。同社は「他社製品と比べ、構成の設定や変更作業時間は45%、システムの監視時間は44%、ストレージの割り当て時間は34%、それぞれ削減できた(Edison Groupによる調査)」としている。
省電力の点では、異なる媒体を組み合わせた「ハイブリッドストレージプール」が基盤となる。従来のストレージ装置はHDDとDRAMにより構成されるが、ハイブリッドストレージプールはHDDとともに、1次キャッシュにDRAMを、2次キャッシュにはSSDを用いる。データの属性や作業の状況ごとに、最適な媒体で処理することにより、全体のパフォーマンスが向上し、一方で高速なHDDの数を減らせるなど、コストや消費電力が抑制できる。
Sun ZFS Storage Applianceは、Solarisに実装されているファイルシステム「ZFS」を実装しており、128ビットまでアドレッシングが可能であるため、高い拡張性を実現できる。「理論上、最大ボリュームは2億5600万ペタバイト、最大プール数が1600京個(京は1兆の1万倍)、ファイルシステムサイズ、ファイルサイズが1万6000ペタバイトとなり、相当巨大なデータにも対応することができる」(同)という。
同社が今後、企業に向けて訴求を強めるのは「テープライブラリ」の効用だ。寺島氏は「すべてのデータを高速HDDに置くとコスト高になるが、高速HDD、中低速HDD、SDD、さらにテープストレージを組み合わせた『階層型ストレージ』を採用すれば、システムにかかる費用は低くすることができる」と強調する。
テープストレージの利点はまだある。同社は、テープライブラリ製品「Oracle StorageTek Tape」で1.8ペタバイトのディスクアレイをバックアップしたケースを試算。この結果、容量(テラバイト)当たりの消費電力はディスクの100分の1だったという。さらに、寺島氏は長期間保管できる点も優位性があるとして、「HDDは5年ほど使用するのが一般的だろうが、テープストレージは30年保管できる」と述べる。東日本大震災以来、データ保全、バックアップ体制の整備についての関心が高まっているが、同社では「長期間保存できるテープストレージは、災害対策にも適している」(同)とみており、BCPやDR関連の需要にも応えていきたい考えだ。
日本オラクル 執行役員 システム事業統括の野々上仁氏は「大容量データを保持するため、テープストレージへの投資も継続していく」としている。