独立行政法人国立病院機構の呉医療センター(広島県呉市)は医療情報システムを仮想化技術によるシンクライアント方式で全面刷新した。共同でシステムを刷新した富士通が11月24日に発表した。
呉医療センターの従来の医療情報システムでは、電子カルテシステムとネットに接続できる(ウェブブラウザとメール、診療科システムなどの)情報系システムは、セキュリティ上の懸念から独立したネットワークとして管理されていた。2つのシステムはそれぞれ個別の端末で利用することを強いられていた。
医師が電子カルテシステムを使いながら、ネットで文献を検索したり、書類を作成したりするためには、複数の端末を立ち上げる必要があった。各診療科でも、たとえば手術の管理情報は、電子カルテシステムに入力したデータを手術管理台帳システムに再入力する二重管理が必要になるなど、業務が煩雑になっていた。
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こうした課題を解決するために、電子カルテシステムと情報系システムのアプリケーションすべてをアプリケーション仮想化ソフトウェア「Citrix XenApp」で仮想化し、1台の端末で両方のシステムを同時に利用できるシステムに刷新している。
新システムは、富士通の電子カルテシステム「HOPE/EGMAIN-GX」を中核に、約35部門のシステムを密に連携させ、構築している。セキュリティ確保のため、電子カルテシステムとネットにつながる情報系システムを完全に分離された2つのクライアント仮想化環境に分けて管理している。
それぞれのシステムのアクセス時には端末からICカード認証によるシングルサインオンで、2つの仮想サーバにアクセスできる。電子カルテとウェブブラウザやメールなども同一の端末で利用できるようになっている。電子カルテなどの個人情報は、サーバで一元管理することで流出対策も強化されているという。
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接触型のICカード認証によるユーザーローミング機能があるシンクライアント方式を採用している。職員は、仮想サーバ上のアプリケーションを実行することで、外来診察室で電子カルテを参照しながら文章を途中まで作成した後で、病棟のナースステーションで別の端末で作業を続けるといったことも容易になったとしている。
医師は施設内の移動が多いことから、業務の効率化を実現できるという。情報系システムの仮想サーバから自分のファイルを呼び出すこともできる“どこでもMy Desktop”感覚で使えると説明している。
これまで部門ごとに構築、設置されていたサーバを仮想化技術で統合して、バックアップなど運用管理を一元化することで効率化とコスト削減を図るとともに、設置面積を従来に比べて約6割削減できている。端末は、CPUの負荷が比較的低いシンクライアントの導入で、システム運用の効率化を図り、運用コストを削減することが期待できると言う。電子カルテと情報系システムを同一端末で利用できることから、端末数が削減され、スペースの効率も改善されるとしている。