米SymantecでセキュリティSaaS「Symantec.cloud」を担当するシニアアナリストのMartin Lee氏によると、現在報告されている標的型攻撃は企業規模に関係なく行われているという。シマンテックは11月29日に説明会を開催、クラウドベースの検知で見えてくる標的型攻撃の現状を明らかにしている。
Lee氏は、スパムとウイルスの傾向をグローバルと日本で比較したデータを提示。メールにおけるスパムの割合はグローバルで74.2%、日本では70.8%とほぼ同等であるのに対し、ウイルスメールの割合はグローバルで235.8通に1通、日本では1048.5通に1通と日本の方がはるかに割合が低いことを説明した。Symantecの顧客は世界で3万5000社、1100万のユーザーがおり、メールのマルウェアは1日に50万件を検出している。このうち標的型攻撃は5000件に1件であるという。
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標的型攻撃は、ごく少数であることが最大の特徴であり、ほかに「標的の関心事を調べて攻撃する」「コピーの数が少ない」「スキルの高い人が作成したオーダーメードのマルウェア」「必ずしもビジネスモデルがはっきりしない」などをLee氏は挙げている。加えて「攻撃者の目的は、商業的、経済的に価値のある情報を密かに収集および送信することであると思われる」という英の国家インフラストラクチャ保護局(Center for the Protection of National Infrastructure:CPNI)のコメントも紹介している。
Symantec.cloudは2005年頃から標的型攻撃を検知しており、2008年4月以降、顧客ベースで7万2500件の標的型攻撃メールが2万8300件のメールアドレスに送信されたという。2010年11月から2011年10月のデータでは、グローバルで46.2社に1社、日本では9.5社に1社が標的型攻撃を受けているという。
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日本への攻撃で特徴的なのは、娯楽・アミューズメント・ゲーム企業への攻撃が全体の35%を占めていることだが、これは同一の企業が繰り返し執拗な攻撃を受けているためだという。これを除けば、政府・公営企業、運輸、製造が多く攻撃を受けている状況はグローバルでも日本でも変わらないとしている。
企業規模という観点からは、どのような企業規模でも同じように攻撃を受けており、これは世界的な傾向という。だが、社内に専任のセキュリティスタッフを置けないケースの多い従業員500人未満の企業では、攻撃に対してより脆弱であるとした。標的となるのは経営者層が34%、管理職が24%と多く、また共通のメールボックスに届くケースも19%と多くなっている。個人では、有識者や団体の幹部、専門家などが狙われ、特に技術分野ではマネージャーが標的になるケースが多い。
Lee氏は、実際に確認された標的型攻撃メールを紹介。日本語に長けており、標的に対する調査が十分に行われ、社会工学(ソーシャルエンジニア)の手法が使われているという。添付ファイルやリンクは、ソフトウェアやOSの既知の脆弱性を悪用するもので、パッチやアップデートを実施していれば防げるものだとした。
日本に送られた標的型攻撃メールを時間で分析すると、日本のビジネス活動に合わせたピークのほか、東欧のビジネス活動とシンクロするピークが確認されたという。このことから、東欧からの攻撃が多いのではないかとLee氏は推測している。
標的型攻撃への対策として、データとサンプルを集約することで継続的な検出の改善が可能なクラウドセキュリティの有効性を強調している。自社の情報資産を知ることで攻撃者の目的を想定できること、さらに、従来の侵入検知システム(IDS)、アプライアンスによるネットワークスキャン、エンドポイント保護に、クラウドによるネットワークスキャンを加え保護を階層化することで、検出を最大限に強化できると提唱している。通常の挙動を把握しておくことで、異常なものを検出できるとも付け加えた。