クラウド環境のベンダーロックインにどう対応すべきか
企業でクラウドサービスの利用が進むなか、クラウドサービスの“リスク”に直面し対応に苦慮するシーンも目立ちはじめた。2011年4月、AWS(Amazon Web Services)に広範囲の障害が発生し、AWSを利用するサービスの多くが停止したこともその1つだ。
SLA(サービス品質保証契約)が定められているとはいえ、実際にサービスレベルが低下してしまった場合、ユーザーには有効な対策がほとんど残されていないことがあらためて明らかになったのだ。
クラウドを利用する企業は、このようなサービス停止のリスクは当然想定している。にもかかわらず代替策がとれない企業が多かったのはなぜなのか。
パトリック・シャネゾン氏
米ヴイエムウェアでデベロッパーリレーションズ担当シニアディレクターを務めるパトリック・シャネゾン氏は、その理由の1つとして、クラウドサービスのベンダーロックインがあるためだと指摘する。シャネゾン氏は、かつて米グーグルでデベロッパーリレーションズ部門を統括し、クラウドやその関連ツールの開発者エコシステムの構築に携わっていた経験を持つ。
「クラウドを提供するベンダーごとに利用できる言語、フレームワーク、サービスは決まっており、ユーザー側が自由にクラウド環境を構築していくことが難しい。ホテルカリフォルニアの歌詞に『落ち着いて自分の運命を受け入れるのです。チェック・アウトは自由ですが、ここを立ち去ることは永久にできません』とあるが、まさにそうした状況だ」(同氏)
例えばPaaSでは、アマゾン、グーグル、セールスフォース・ドットコム、マイクロソフトなどが主要プレイヤーとなるが、言語は、Java、Python、Apex、.NETなどと異なり、対応するフレームワークやデータベース/データストアもそれぞれ異なる。提供するサービスに障害が発生したからといって、AWSを利用しているユーザー企業がそのサービスをGoogle App EngineやWindows Azureへとすぐに移行できるわけではない。いずれかのサービスを選択したら、その運命を受け入れざるをえないわけだ。
もっとも、そんな状況でもサービス停止という問題を乗り越えた企業は存在する。