ヴイエムウェアは、11月8日と9日の両日に開催しているイベント「vForum 2011」の会場で、ハイブリッドクラウドの事業戦略に関する記者会見を開催した。
来日した、米VMwareの仮想化/クラウドプラットフォーム事業担当 上級副社長 Raghu Raghuram氏は、ハイブリッドクラウドの主要な役割として、ユーザーの広範な要望に応えることと、「ポストPC」時代の需要に対応していくことなどを挙げた。
「コスト削減」から「変化への対応」へ
「ハイブリッドクラウドへの工程は、まず仮想化から」——。
Raghu Raghuram氏
Raghuram氏はまずこのように述べ、「ほとんどの企業は仮想化によってコスト効率を向上させることを目指し、次にビジネスの根幹を成すアプリケーションも仮想化させ、ビジネス品質を高めていく。さらに、ビジネスの俊敏性を獲得する」として、仮想化を中核にして企業が単なるコスト削減を図る段階から、変化に対して自在に対応できるような態勢へと進んでいく過程を示した。
このような動きは着実に進行し始めているようだ。同社が顧客を対象に調査したところ、「2010年1月時点で、Microsoft Exchangeの38%、SharePointの53%は仮想化されていた。2011年4月には、Exchangeの仮想化率は42%、SharePointの方は67%までになっている。Microsoft SQLや、Oracle Middleware、データベースでも、仮想化が進行している」(Raghuram氏)という。同社は「仮想化への支持が高まっているのは、コスト効率の点だけでなく、管理の容易性や耐障害性が評価されているからだ」(同)とみている。
同社のハイブリッドクラウド戦略では、パートナーとのエコシステムが重要な機軸として位置づけられている。これは、同社単体で戦略を推進していくことは困難だと考えていることもさることながら、「クラウドを導入すると、特定のベンダーに囲い込まれるのではとの懸念をもつ企業もある」(同)ことへの回答ともいえるだろう。豊富なパートナーを集めることにより「クラウドのオペレーターの選択肢を広げるのが当社の使命」であると、Raghuram氏は強調する。
「アプリケーションの本質が変わってきている」
Raghuram氏は「アプリケーションの本質が変わってきている」と指摘、この分野での動向に注目している。従来、コンシューマー向けのアプリケーションは、パソコンでアクセスするウェブサイトが主要な基盤だったが、SNSの台頭やスマートフォンをはじめとするモバイル機器の進化により、リアルタイム性が高まるとともに、新たなアプリケーションが投入される速度も早くなってきている。「モバイル分野の発展により、アプリケーションはさまざまな体験をユーザーに提示できるようになった。しかし、それだけデータ量も増大しており、データ管理はこれまでの体制では不十分になってきている。新しい仕組みが必要だ」(同)との課題も出てきた。
ITの世界では、これまでWindowsとパソコンが主流だったが。「Steve Jobs氏が、ポストPCと呼んだ時代が訪れようとしている」とRaghuram氏。「既存のパソコンがなくなるわけではない」と述べつつも、アプリケーションはサービスとして、どんなデバイスでも使えるようになることが要求されるとの見解だ。
ポストPC時代には、さまざまなアプリケーションやサービスを集約、単純化し、それらをどこからでもアクセスしやすいように管理し、安全性が確保された状態で多様なデバイスに対して供給できる仕組みの構築が重要であるとヴイエムウェアは考えている。これにより「エンドユーザーコンピューティングが実現され、ハイブリッドクラウドへの道程へとつながる」(同)ことになるという。