仮想化技術のデファクトスタンダードになっているVMware製品。日本はもちろん海外でも多くの企業が、仮想化基盤ソフトウェア「VMware vSphere」を中心にした製品を活用してインフラを集約、情報システムの効率性向上を目指し、プライベートクラウドを構築しつつある。
だが、1つの企業が構築できるプライベートクラウドには限界がある。人材やコストには限界があるからだ。そうした限界を乗り越えて、海外にあるどんな拠点からもアクセスさせるためには、プライベートとパブリックを組み合わせたハイブリッドクラウドという解決策が選択肢の1つになってくる。
そうしたユーザー企業の意図を考慮して編み出されたのが、昨年開催された「VMworld 2010」で発表されたパートナー制度「VMware vCloud Datacenter Services」だ。このvCloud Datacenter Servicesの発展版とも言える「VMware vCloud Datacenter Global Connect」が今年の「VMworld 2011」の初日である8月29日に発表されている。
vCloud Datacenter Servicesでは、VMwareのパートナーであるサービスプロバイダーが、事前定義された仕様に合わせて構築されたクラウドインフラ基盤でエンタープライズクラスの性能や要求に応えられるパブリッククラウドをサービスとして提供する。ユーザー企業はvCloud Datacenter Servicesのリソースを利用することで、企業内部のリソース要求に応えることができる。必要な場合には、プライベートクラウドからvCloud Datacenter Servicesにワークロードを移動させることができるようになっている。
vCloud Datacenter Servicesに参加するサービスプロバイダーは、通信事業者としては米国のBluelockとVerizon、英国のColt、シンガポールのSingTel、日本のソフトバンクテレコム(7月29日からサービスイン)、ITベンダーとしては米国のCSCとTerremarkが参加している。そしてVMworld 2011の2日目、8月30日には意外にもハードウェアメーカーのDellが新たに加わっている。
VMwareのJoe Andrews氏(製品マーケティング担当ディレクター)はvCloud Datacenter Servicesの強みとして「サービスの一貫性」を挙げている。
参加するサービスプロバイダーのインフラ部分では、vSphereのほか、IaaS環境を構築して運用管理を担う「VMware vCloud Director」などを採用している。同様の製品でプライベートクラウドを活用しているユーザー企業は、内部の仮想マシン(VM)や仮想アプリケーション(vApp)をvCloud Datacenter Servicesに容易に移動できる。これがAndrews氏が言うサービスの一貫性だ。
「エンタープライズクラスが要求する可搬性や互換性、セキュリティ、そして管理性を一貫して提供することができる。特にセキュリティについてはSAS Type 70 IIやISO 27001に準拠した監査可能なレベルのセキュリティを提供できるという強みがある」(Andrews氏)
サービスの一貫性という強みを持つvCloud Datacenter Servicesだが、そのパートナー同士を連携させようというのが、vCloud Datacenter Global Connectになる。Global Connectに参加するサービスプロバイダーの1社と契約すれば、ほかの地域のサービスプロバイダーでも同様のサービスを受けられるのだ。このプログラムに参加するのは、BluelockとColt、SingTel、そしてソフトバンクテレコムの4社。それぞれのサービスプロバイダー間はVPNで通信するという。
VMwareは2月に、vCloud Directorの無料プラグインとして「VMware vCloud Connector」を公開している。これは、VMやvAppを転送し、管理するツールだ。新版となるvCloud Connector 1.5がVMworld 2011初日の8月29日に公開されている。
vCloud Connector 1.5についてAndrews氏は「転送の速度と信頼性が向上している」と説明。プライベートクラウドとパブリッククラウドの間の信頼性が向上することで、ハイブリッドクラウドのメリットをユーザー企業は享受できると、そのメリットを強調している。