米VMwareは8月29日(米国時間)、米ラスベガスで年次カンファレンス「VMworld 2011」を開催した。その中で同社の最高経営責任者(CEO)Paul Maritz氏は新製品を発表している。
VMwareは7月に仮想化基盤製品「VMware vSphere 5」などを中心とした製品群を発表。同社はこれらの製品群を「クラウドインフラスイート」製品と位置づけ、データセンターの効率化と高度な自動化を考えている企業のニーズに応えたものとしている。
vSphere 5は2年ぶりのメジャーバージョンアップとなるが、Maritz氏はイベントの基調講演の中でvSphere 5について「エンジニアの時間にして100万時間以上費やした。その議論には200万以上の時間を費やした。その結果、200以上の新機能を盛り込んだ」と、その開発に大きな投資を行ったことを明らかにしている。
vSphereをはじめとする仮想化製品群は、企業向けの仮想化環境のデファクトスタンダードになっていると言えるが、同社製品がいかに活用されているのか。その実態についてMaritz氏は「6秒ごとにVM(仮想マシン)が生成されており、vSphere上で稼働するVMの数は2000万。物理マシンの間を移動するVMの数は1秒間で5.5個」と説明。同社の製品群による仮想化環境の普及が進んでいることを示している。
メインフレームからC/S、そしてクラウドへ
基調講演の中でMaritz氏はこれまでの企業ITの歴史を振り返り、その歴史をメインフレーム時代、クライアント/サーバ(C/S)時代、クラウド時代という3つに区切って説明している。
Maritz氏によると、メインフレーム時代の主要な用途は、自動化や会計処理だったという。次のC/S時代になると、GUIやアプリケーション開発言語のC++、Java、HTMLやIP網などの技術が発達していった。この時代は主流はPCであり、主要な用途は統合基幹業務システム(ERP)や顧客情報管理システム(CRM)、電子商取引(EC)、リアルタイムではない情報分析と説明している。
その次の時代として、Maritz氏は現在を“クラウド時代”と称している。PCではない端末がネットワークに接続され、その数は数十億単位になるという。このクラウド時代では、PCは少数派になるとMaritz氏は言う。加えて、標準化作業が進むHTML5やアプリケーションの開発フレームワーク、そしてIaaSからPaaS、その上のSaaSを含めて“XaaS”が広く普及し、その主な用途として、リアルタイムかつ高い拡張性がある情報分析やECがあるだろうと説明している。
そうしたクラウド時代の状況下では、メインフレームは脇に追いやられ、オープン系に置き換わっていくことになる。またC/S時代の資産は、既存あるいは今後のアプリケーションを活用するために、その基盤と運用は“現代化(modinize)”されることになるという。現在の資産についても、新しいアプリケーションや既存アプリケーションを刷新するために投資するべきだと主張する。
7月に発表されたvSphere 5をはじめとする製品群は、この基盤と運用の現代化を担うものとMaritz氏は説明する。7月に発表されたのは、vSphere 5をベースに、データセンター間で災害復旧(DR)を行うための「VMware vCenter Site Recovery Manager(SRM)5」、データセンター全体の状況やパフォーマンスを管理する「VMware vCenter Operations」、VMとその上のアプリケーションの両方に対してセキュリティを保つ「VMware vShield 5」、プロセスの自動化やセルフサービスのコンポーネントとなる、クラウド運用管理ソフト「VMware vCloud Director 1.5」という製品だ。これらの製品は今後シークエンスをそろえていくことをMaritz氏は明らかにしている。