マイクロソフト、ビッグデータ時代のプライバシー保護を語る

藤本京子 2012年03月02日 19時34分

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 Microsoft会長のBill Gates氏が「Trustworthy Computing」(信頼できるコンピューティング)構想を発表して10年が過ぎた。

 この節目となる年に、MicrosoftのTrustworthy Computing担当バイスプレジデント Scott Charney氏が、米国で開催中のセキュリティカンファレンス「RSA Conference 2012」の基調講演で新たな構想を語った。

 Charney氏は、ITへの依存度がさらに高まり技術と社会が複雑に絡み合う現在、「我々は新たな分岐点を迎えている」としている。その中で、安全性とプライバシー保護、信頼性の向上に向けたより効果的な指針が必要だと述べた。

Scott Charney氏
Scott Charney氏

 新たな分岐点の背景として、Charney氏は3つの理由を挙げる。ビッグデータがプライバシー保護に影響を与えていること、政府とインターネットの関係が変化しつつあること、そして新しい脅威モデルが登場していることだ。

 まずビッグデータについてCharney氏は、「享受する恩恵も多いが、ビッグデータ特有の課題もある」と述べる。デバイスの増加やクラウドサービスの普及により、新しいタイプのデータを新しい方法で収集し、分析できるためだ。

 例えば、これまでは入手できなかった位置情報がGPS機能搭載デバイスの普及で入手可能となった。位置情報データはまさに「サービスで受ける恩恵と、どこでも追跡されるというプライバシーのリスクの狭間を理解する鍵だ」とCharney氏は言う。

 またCharney氏は、ユーザーデータを収集する方法にも課題があると指摘する。

 組織がユーザーデータを集める際、どのようなデータを集め、どうやってそのデータを使うかをユーザーに説明し、承認させた上でデータを収集する。しかしユーザーは、それぞれのデータについてそれぞれの承認プロセスを経なければならない。また、この手法はデータ収集側とデータ提供側の二者間のみで成立しているに過ぎないとCharney氏は警告する。

 例えば、保険会社に傷害保険を申請している人が、傷害を負ったとは思えないほど元気そうに運動している姿を友人に撮影され、友人がその写真をFacebookに掲載、保険会社がそれを見つけたとすると、どうなるだろうか。この場合、撮影された本人がFacebookに写真を掲載しなくても、友人がFacebookとのデータ収集の規約の下で写真を掲載したに過ぎない。この時点でデータ収集の承認モデルは崩壊しており、「新しい世界でデータをいかに取り扱うか、ビッグデータ時代に合った適切なデータ活用モデルが必要だ」とCharney氏は指摘する。

 政府とインターネットとの関係については、「二者の関係が複雑化している」とCharney氏。政府は、インターネットのユーザーであることはもちろん、インターネットから国民を保護したり、インターネットそのものを守る立場にもある。さらにCharney氏は、インターネットのスパイ行為などの報道を例に挙げ、政府がインターネットを一般人とは異なる目的で活用している可能性があるとしている。


Scott Charney氏

 また、政府がデータにアクセスする際にも課題が発生するとCharney氏は言う。米国民であれば、第三者にデータを渡した段階でそのデータは本来の所有者の管理下にはないと判断されるが、「クラウドの世界ではすべてのデータが第三者の手に渡っていることになる」とCharney氏。また、自国で発生した事件で自国に住む容疑者を調べている時に、データだけが他国にあった場合、そのデータを入手するための規制はどうなるのかといったことも問題になるとCharney氏は指摘する。

 新しい脅威モデルについては、「技術が進歩して製品の質が向上しても、サイバー攻撃はより進化している」とCharney氏。これまでのような機会便乗型の脅威が未だ猛威をふるっていることに加え、最近の攻撃は継続的でやっかいだというのだ。

 「APT(Advanced Persistent Threat)とも呼ばれているが、APTの多くはそれほど“Advanced"(高度)ではない。単に持続性があって、継続的に発生し、必ず狙った獲物を攻撃するという強い意志があるだけで、攻撃手法そのものはパッチのあたっていないシステムを探したり、ソーシャルエンジニアリングで攻撃するといったものがほとんどだ」(Charney氏)

 こうした攻撃がやっかいなのは、「敵は非常にしつこく、彼らが侵入に成功する確率は高い」(Charney氏)という点だ。そのため、しっかりしたセキュリティ戦略で対抗すべきだとCharney氏は主張する。その戦略とは、「防御」「検知」「封じ込め」「リカバリ」だ。

 「単に攻撃を防いでリカバリできるというだけでなく、攻撃を素早く検知し、封じ込めることで、被害の範囲を最小限にとどめるようなシステムを構築すること。防御、検知、封じ込め、リカバリのすべてを整えた戦略こそ、現在の攻撃から身を守る方法だ」(Charney氏)

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