トレンドマイクロは3月26日、2012年の戦略を発表した。同社で最高経営責任者(CEO)を務めるエバ・チェン氏は、2012年の注力分野として「クラウド」「コンシューマライゼーション」「リスクのコントロール」の「3つのC」を掲げた。また、クラウドを活用して最新の脅威情報をリアルタイムで提供するセキュリティソリューション「Smart Protection Network(SPN)」を拡張するとした。
SPNの拡張は、クラウドにおいてはプラットフォームの自動検出、脆弱性防御、ワークロード暗号化を、モバイルにおいてはロケーション情報、SIMカードによる識別、モバイルアプリの評価、デバイスコントロールを、APTや標的型攻撃の対策においては最新のC&Cサーバーリスト、アプリケーションホワイトリスト、エクスプロイト検出、コンプライアンスやデータ漏えいへの対策などと対応領域を広げ、集めた情報を「ビッグデータ」として分析し、各製品へ提供する。
3つの「C」のクラウドでは、物理、仮想、クラウド環境における脅威からの保護を推進し、いかなる環境でも統合的に運用管理できるソリューションを提供する。コンシューマライゼーションでは、従業員のデバイスをビジネスに利用する「BYOD」などの点で、「可視性と管理性の回復」「信頼性を持った共有」「どこでもデータ保護」を実現するソリューションを用意するとした。
リスクのコントロールでは、APT攻撃や標的型攻撃の特性である「ソーシャル」「複雑」「人目を盗む」に対応するため、新たに企業ネットワーク内に設置する「Deep Discovery 3.0」を提供する。ネットワーク外のグローバルな部分はSPNで保護することで、ローカルとグローバルを組み合わせてAPT攻撃や標的型攻撃から企業を保護する。「一層でも多くの防御を用意することでネットワーク内に入りづらくし、内部で分析する時間を稼ぐことが可能になる」とチェン氏は述べている。
トレンドマイクロ最高経営責任者(CEO)のエバ・チェン氏
またチェン氏は、同社の戦略を「ワンストップ型でソリューションを提供するベンディングマシンアプローチ」と形容。顧客のところにセキュリティソリューションの自動販売機を設置するようなもので、プラットフォームを領域ごとに素早く導入することが可能であるとした。さらに、新たにSSL証明書を提供するソリューションを提供する。これは定額制で無制限の証明書モデルで、同社が人手によるチェックを実装して顧客へ優先的に直接提供する。
さらに、地域による成長戦略として「SoLoMo」を提唱した。SoLoMoは「ソーシャル」「ローカル」「モバイル」の造語で、マーケットを日本、米国、中国、ドイツの「ローカルキング」、インド、英国、フランス、オーストラリア・ニュージーランド、ブラジル、カナダ、中東の「スケールアップ」、アジア太平洋、南米、欧州の「敏捷で効率の良いビジネス推進」の3つに分け、それぞれ最適なスタイルでビジネス成長を推進する。
トレンドマイクロ取締役副社長の大三川彰彦氏
続いて同社取締役副社長である大三川彰彦氏が登壇し、日本市場のエンタープライズ戦略について発表した。中期目標として、受注ベースで2014年の総売上高を25%増の650億円超、2016年には50%増の780億円超を掲げ、特にVDIをはじめとする仮想化の伸びが大きいエンタープライズ市場に注力するとした。仮想化、クラウド、VDIはアジア全体で活性化しており、大三川氏はそれを肌で感じているという。
国内エンタープライズ市場では、サイバー攻撃対策、クラウド、モバイル、セキュリティインテリジェンスセンターの4つの柱に注力し、形態としてはソリューションビジネスとサービスに重点を置いた二極化戦略を進める。また、主力製品のロードマップを示し、パートナー施策として二極化戦略におけるパートナーの拡大と支援の強化を行う。大三川氏は、「日本に根を生やした会社の利点を活かし、よりお客様に近いところ、また海外に進出していく企業へのセキュリティも対応していく」と述べた。