ウェブOSからスタートページへ——Jolicloud創業者 兼 CEOのタリック・クリム氏
Googleが「Chrome OS」を発表する前にネットブック用OS「Jolicloud」を開発したことで知られるフランスのJolicloud。
同社の創業者で最高経営責任者(CEO)のTariq Krim氏が10月17日、Jolicloudを再ローンチした。
クラウド時代を見据えてJolicloudを立ち上げたKrim氏だが、Jolicloudの方向性はこれまで二転三転している。最新のJolicloudは「なにを開発するのか」ではなく「なぜ開発するのか」の視点から生まれたという。
Krim氏がアイルランド・ダブリンのスタートアップイベント「Web Summit 2012」で新製品の背景について語った。
Krim氏はスタートページサービスの「Netvibes」(今年フランスのDassault Systemesが買収)を立ち上げ、2009年にJolicloudを設立した。Krim氏は当時を振り返り、「クラウドこそ現代でもっとも重要なものだと思った」と述べる。
しかし、その認識は「間違っていた」とKrim氏。クラウドの重要性を否定しているのではない。一夜にしてクラウドの時代が訪れるのではないという点で、自身の読みが間違っていたということのようだ。
問題は何なのか? Krim氏はPC時代からポストPC時代への移行がスムーズではないからだと言う。クラウド経由で提供されるサービスは無数にあり、ユーザーはオンラインストレージ、SNS、Webメール、音楽とさまざまなサービスを使っている。もちろん、端末とOSがそれぞれ異なることは言うまでもない。Krim氏はこれを「分断」と形容する。「分断は痛みだ」とKrim氏は強調する。
だが「分断は自由(の象徴)でもある」と続ける。
Google Docs、Dropbox、Evernote、Instapaperなどのさまざまなサービスが登場し、それらのイノベーションをユーザーは享受している。統一された環境では他からイノベーションが入り込む隙間はなく、ユーザーも新しい使い方や利便性などのメリットを得られないのだ。Krim氏は分断の正反対として、Appleのクラウドサービス「iCloud」を取り上げ、「家具が備え付けの部屋」と例える。人の嗜好は異なる。端末、プラットフォーム、アプリとそれぞれを自分のテイストで選んでいるのだ。
そうやって試行錯誤した結果が、新しいJolicloudとなる。Jolicloudはネットブック用のWeb OS(Joli OS)としてスタートし、その後、FacebookやTwitterなどのサービスをアグリゲードする方向に方針を変更した。自分が利用するクラウドサービスに容易にアクセスする「Jolicloud Me」、クラウド向けのオフライン対応HTML5アプリケーション「Jolicloud Desktop」、独自開発した高速なブラウザ「Nickel」などの多数の製品をどうやって1つにするか。
今夏、チームで話し合った末に行き着いた結論がクラウドのスタートページだ。ユーザーが使うアプリケーションやコンテンツを集め、ここにくれば全てがあるというページとなる。
スタートページといえば、Krim氏が以前に手がけたNetvibesを連想する。Krim氏もそれを認め「スタートページのコンセプトに戻った」と説明する。スタートページがエンジンとして土台の役割を果たし、ユーザーはBox、Dropbox、Google Drive、Facebook、Twitterなどのさまざまなオンラインサービスとプラグインでつながる。「Storage」「Photo」などのメニューを持ち、ここからクラウドにあるドキュメント、音楽、写真などにアクセスできる。それだけでなく、アプリセンター「App Center」から新しいサービスを探すことができ、クラウドアプリケーションプラットフォームとしての機能も強化していく。今後、開発者向けにAPIを公開するという。
「クラウドは音楽みたいなもの。メジャーレーベルもあれば、インディーズもある」と、Krim氏は音楽にたとえて言う。メジャーサービスとインディーズが共存し、ユーザーが好みにより使い分ける「自由」をJolicloudを通じて提供する。
Krim氏はこの日、Joli OSの最新版「Joli OS 2」を間もなく公開することも発表した。Joli OSは学校を中心に多くのユーザーを持つとのことだ。
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