企業が事業を展開する上でシステムは欠かすことができない。ビジネスが常にスピードの向上を求められるために、システムのスピードも常に向上を求められている。同時に、ビジネスにかかるコストも常に低減を求められ、同じくシステムに必要なコストも常に削減要求にさらされる。
そして、システムはこれまでの個別最適ではなく、全体最適への進化も求められている。そのシステムの集積地がデータセンターだ。一見すると、データセンターそのものは大きな建物であるために、あまり変化がないように見える。
だが、サーバがラックマウントからブレードに進化しているように、データセンターもまた変化している。プロセッサのクロックスピード向上やサーバの形状変化、ネットワークの帯域幅向上など、ハードウェアの進化だけでなく、データセンターを取り巻く、IT部門など状況の変化にもあわせて、データセンターは変化している。ここでは、データセンターがどのように変化しているのかをまとめる。
コンテナ型のメリット
データセンターの流れとして大きく注目できるのが、コンテナ型の登場だ。これは米国でGoogleやMicrosoftなどが始めたもので、それからやや時間が経って、2010年から日本国内でも手がけるベンダーが出てきている。
一般的なデータセンターは、まず建物を建築し、その中にサーバやネットワーク機器などのハードウェア、付随する空調機器やそのほかの設備を押し込めていくというものだ。
それに対して、コンテナ型データセンターは、サーバやネットワーク機器などをある程度数を揃えたものを、トラックに載せるようなコンテナとしてパッケージ化して追加するというものである。データセンター全体で処理能力が足りなくなるようであれば、コンテナを追加することで全体の処理能力を高められるメリットがある。また、そのまま車両で輸送できるという利点もあるため、その仕組みからモジュール型とも呼ばれることがある。
建物を建ててしまうと、面積が決まってしまう。詰め込めるラックの数も、いくらサーバが高密度化したとしてもやはり限界がある。電源や空調といった設備も一回設置してしまうと、なかなか変更することはできない。そうした既存のデータセンターの限界を打ち破るものとして、コンテナ型は注目されている。
コンテナ型のメリットはそれだけではない。すべてのコンテナ型というわけではないが、コンテナ型の場合、外気を利用してハードウェアから排出される熱を冷ますということができるからだ。
このコンテナ型データセンターを日本国内で初めて運用しているのがインターネットイニシアティブ(IIJ)だ。その後、自らデータセンターを運営するのではなく、ユーザー企業が稼働させるデータセンターに設備などを提供する企業として日立製作所やNEC、富士通などがコンテナ型の分野に参入している。
コンテナ型データセンターは当初、日本での設置は難しいと見られていた。というのは、建築基準法でデータセンターは“建築物”とされていたためだ。同法で言う建築物とは、人間が立ち入るものであり、安全性などの点で厳しい基準が課せられることになる。そのため、データセンターの建設では、建築物としての安全性が求められることになる。
だが、コンテナ型データセンターは、建築基準法で言う建築物ではないという通達が国土交通省から2011年3月に出された。これ以降、日本でも容易に設置されるようになっている。
コンテナ型データセンターは建築物ではない。つまり、完成以降、その中に人間が立ち入ることはできない。このため、コンテナ型データセンターでは、中に設置されているハードウェアや設備などを遠隔から管理することが大前提となっている。この点でも、コンテナ型は、従来のデータセンターとは大きく異なっているのである。