変容するデータセンター--コンテナ型でPUE低減でも複雑化が進行中 - (page 3)

田中好伸 (編集部)

2012-12-30 17:00

 データセンターの中のどこにどんなハードウェアがあるのか。その数が多いだけにそれらをすべて把握するのは大変な労力がかかる。業界大手のiDCでも、ハードウェアを管理するのに、表計算ソフトの台帳で手作業でこなしているという話も聞こえてくる。

 もちろん、こうした作業を自動化するための仕組みも提供されている。例えば、ラリタン・ジャパンのハードウェア資産管理ツールNECの構成管理ソフトウェアシュナイダーのITインフラ管理ソフトウェアなどがある。

 データセンターの複雑化という意味では、ネットワークが仮想化環境に追いついていないという背景もある。この数年でハイパーバイザでひとつの物理サーバに仮想化、統合するということが一般的になりつつある。また仮想化技術の進展で、ある物理サーバから別の物理サーバに仮想マシンが稼働したまま移動するライブマイグレーションも可能になっている。同様にストレージの仮想化も技術の進展で可能になりつつある。

 だが、ネットワークは仮想化技術以前の古いものであるために、仮想化技術に対応しきれなくなっている。具体的には、例えばライブマイグレーションのために、ネットワーク機器の設定をすべて手作業で行わなければならないという負担がかかっている。

 こうした点で注目されているのが、ネットワークの仮想化だ。新しい技術モデル「Software-Defined Network(SDN)」であり、それを具現化する技術としての「OpenFlow」がそれに当たる。NECが3月から九州でサービスを始めるデータセンターは、このOpenFlowをベースにしたネットワーク制御技術を活用している。サーバの仮想化に対応するための新しいネットワーク規格として標準化が進められている「Virtual eXtensible VLAN(VXLAN)」も、この流れの中にある。VXLANはVMwareやCisco Systemsなどが共同で標準化を進めている。

懸念される「2013年問題」

 現在、データセンターはかつてない勢いで新設されていると表現できる。ビジネスのシステム依存度が高まるにつれての勢いとも言える。だが、新しいデータセンターが相次いで新設されていくために、需要以上に供給が多くなってしまうのではないかという「2013年問題」が懸念されている。

 大震災後、首都圏では電力供給が不安定になったために、首都圏以外のデータセンターを利用することに関心が集まっている。NECの九州北海道そして関西、TISの大阪、日立の岡山など、それぞれ首都圏以外でデータセンターを稼働させるようになっている。これらは首都圏で災害などが起きた際のバックアップサイトとしての利用も想定している。

 大企業は首都圏、特に東京23区内に集中しているために、データセンターも東京23区内に集中する傾向がある。これはIDC Japanの調査でも明らかになっている。だが、この動きも、キヤノンマーケティングジャパンアイティフォーNRIなどが東京23区外でデータセンターを稼働させるなど、少しずつ傾向が変わる兆候を見せている。

 ユーザー企業としては、自分たちのビジネスにとってのシステムの重要性を見極めて、どんなデータセンターを利用すればいいのか、その細部を見極めて選ぶことが求められている。

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