日本マイクロソフトと大阪府教育委員会は、病気やけがなどで長期にわたって通学が困難な府立高等学校の生徒を対象にした遠隔授業サポートシステムを活用し、自宅や病院から在籍するクラスの授業を受けられるようにする。
2012年9月から、府内の高校で遠隔授業サポートシステムの試験導入と検証を実施してきた経緯があり、その成果をもとに、府立高校全校を対象に導入する。
実現のため、日本マイクロソフトの教育機関向けクラウドサービス「Microsoft Office 365 Education」を活用する。これに含まれる「Microsoft Lync Online」を使用し、自宅や病院のPCを通じて、授業に参加できる。
会見はLync Onlineにより、大阪府庁と、東京・品川の日本マイクロソフト本社、出席者である大阪府教育委員会・陰山英男委員長がいる東京・銀座の会場とを結んで行われた。
教育分野向けにOffice 365 Educationを無償で提供
Office 365 Educationは、教育分野向けに無償で提供しているもので、学校のPCやウェブカメラ、インターネットといった既存のIT環境を利用して、遠隔授業が行えるようになる。
Microsoft Lync Onlineは、既に企業のウェブ会議などで活用されている実績があり、セキュリティやプライバシー保護にも配慮することができるという。生徒側では、Windows 7/8が動作するPCを用意する必要がある。
大阪府では、8人の生徒を対象にした検証の結果、既存のインターネット回線やPC環境でも双方向での映像、音声の遅延がなく、円滑に授業を受けられること、専門知識がなくても扱えることなどの成果が得られており、「自宅から授業に参加できるようになった生徒が療養中も継続して学習でき、登校後も学業をスムーズに進めることができ、卒業資格を得るに至った」という。
録画映像を教員の研修や欠席した生徒が閲覧
授業の様子を録画できるため、体調不良で授業に参加できになかった生徒が録画映像で学ぶことができ、学習の遅れを防止するといった活用も可能であるほか、教員の研修、研究素材として活用することもできるという。
今回の検証では、システム設定、運営、マニュアル作成サポートではビービーシステムが、スピーカ機材提供ではGMネットコムジャパンが参加した。
日本マイクロソフト パブリックセクター統括本部文教本部長の中川哲業務執行役員は「導入に1年かからなかったことに驚いている。既存システムをそのまま活用できること、システムの環境設定や運用ノウハウをまとめた活用マニュアルを作成し、これを活用することで、円滑に導入できた点も大きい。クラウドを活用することで、学校にIT管理者を置かずに済む点も導入面での利点」とした。
検証を通じて、教室のどこにカメラやマイクを設置すればいいのかといったノウハウも蓄積しており、これを活用マニュアルの中にも表記したという。