誰でもできる情報整理術

情報整理の要「分類・ラベリング」

仁宮 裕(産業能率大学総合研究所)

2013-05-13 11:00

 前回の記事では、いかに文書・データの量を減らして行くか、ということについて論じました。最終回である今回は、量を減らして絞り込まれた情報を、どのように分けて行くかについて考えます。加えて、分けたものに名付け(見出し付け)を施す際の留意点についても述べておきたいと思います。

 一言で言うならば、今回のテーマは「分類・ラベリング」です。「ラベリング」とは、紙媒体ならば文書の表題やバインダの見出しを、デジタル媒体ならばファイル名やフォルダ名を、どのようにつけるかということです。いかに分け、名付けて行くかは、情報整理の要ともいえるでしょう。

分け方のポイント

 まず分け方のポイントについて考えてみましょう。これは、前回の「捨て方/残し方」と同様、何らかの基準を設けることが有効です。

  • 種類別に分ける
  • プロジェクト別に分ける
  • 相手先別に分ける
  • 時系列で分ける
  • 形式別に分ける


 最も一般的だと思われるのが、「種類別に分ける」というやり方でしょう。例えば、企画書をひとまとめにする、議事録をひとまとめにする、というような要領です。

 しかし、このやり方ですと、ひとまとまりの仕事の単位で情報を把握することが難しくなる場合があります。例えば、会社の50周年記念イベントの企画実行に携わっていて、自分も含めた実行委員会のメンバーが共有しなければならない文書・データが次々と発生するような場合です。

 このような場合には「50周年記念プロジェクト」という背表紙のバインダを作って、関連する企画書や議事録を一緒に綴じておいた方が便利かもしれません。つまり、「プロジェクト別に分ける」という分類基準を採用するわけです。

 視点を大きく変えて、種類やテーマではなく誰とやり取りした情報か、という分け方をするのも一つの手です。この場合、「相手先別に分ける」という基準を採用しているわけですね。特に、電子メールなどはこの基準を採用すると便利であることが多いようです。一方で、「誰とやり取りした情報か」よりも「いつ頃やり取りした情報か」が重要になってくる場合もあるかと思います。その場合は、「時系列で分ける」という基準が採用されることになるでしょう。

 さらに視点を変えて、書類の物理的な形状に着目して「形式別に分ける」というやり方も、有効な場合があります。同じ形式の伝票が、同じバインダに綴じられている、というのはよく見る光景ですね。

 ここまで、5つの基準の例を紹介してきましたが、実際にはどれか1つの基準でフラットに分けるということは少ないでしょう。実務上は、いくつかの基準を組み合わせて階層的に分ける必要があると思われます。

ラベリングの留意点

 分けるための基準が頭に入ったら、ラベリングをする際の留意点も押さえておくことにしましょう。

 まずは、「あいまいなラベリングは避ける」という意識を持ちましょう。特に「○○類」とか「××系」といった柔軟性の高い見出しをつけてしまうと、本来そこに分類されるべきでない文書・データがその場所に雑多に放り込まれるようになってしまい、後から困るという事態を招く危険性が高まります。

 次に、「長すぎる名前をつけない」ことが大事です。見出しを見ただけで内容の見当がつくようにすることは大切ですが、内容を見出しに反映しようとし過ぎて長すぎるラベリングになってしまっては本末転倒です。

 また、「自分の耳になじんだ言葉を使う」ことを意識することも大切です。職場で共有する文書だから少しカッコいいタイトルにしてやろう、とばかりに普段自分が使わないような言葉でラベリングをすると、しばらく経ってから自分でも内容の見当がつかなくなってしまうことがあります。

分類・ラベリングの着眼点

 最後に、有効な分類・ラベリングを実現する上での着眼点について述べておきたいと思います。

図:分類・ラベリングの着眼点
図:分類・ラベリングの着眼点

「内/外」の視点を持つ

 会社の外とやり取りした情報なのか、社内限定の情報なのかという視点で分類・ラベリングをすると、後で探しやすくなると同時に、情報セキュリティの面からも好都合になることが多いようです。

情報に対するアクションを識別する

 メールなどでは、無意識に行っている方も多いと思いますが、読んで終わりなのか、何か行動を起こさなくてはいけないのか、行動の結果を返信しなければならないのかを、分類・ラベリングによって明確にします。

緊急度・重要度を意識する

 前述の2つの視点を掛け合わせると、例えば「社外、かつアクション要」といったような「重要度」が高いと思われる情報が載った文書・データが括り出されてくることになります。そして、ものごとの優先順位を付ける際に重要度とセットで考えなければならないのは、「緊急度」です。

ヒト・モノ・カネにかかわるものか否かを判別する

 仕事をしていく上で基本となる「経営資源」に着目することも忘れてはいけませんね。人の配置にかかわる情報、商品の生産・配送・納品にかかわる情報、金銭の出納にかかわる情報は、ひと括りにしておくと便利な場合が多いようです。

 全3回に渡って情報整理について述べてきました。捨てる/残すの基準にしても、分類・ラベリングの基準にしても、「誰に対してもどんな状況であっても100%あてはまる」といえるような決定版はありません。

 文書・データ整理にまつわる問題に対しては、唯一絶対の正解などないのです。大切なのは、自分の携わっている仕事の特徴や、やり取りする文書・データの量や頻度に応じて「自分なりの基準」をつくることです。この記事が、読者の皆さん自身の基準を確立するきっかけとなれば幸いです。

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仁宮 裕
産業能率大学総合研究所 主幹研究員
民間企業にて、ソフトウェア開発/システムインテグレーションに従事。2004年産業能率大学総合研究所入職。企業および自治体に対して各種ビジネススキル研修、マネジメント研修を実施。産能マネジメントスクールにおいて、公開セミナー「文書・データ整理術」他の講 師を担当している。主な著作物:「業務革新 理論と実践」産能大学出版部(共著) 所属学会:経営情報学会

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