シリコンバレーの天才、D・エンゲルバート氏の悲劇的な人生 - (page 3)

Tom Foremski (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2013-07-17 07:30

 Ross Mayfield氏は、2005年6月にDoug Engelbart氏へのインタビュー記事の中で、次のように述べている。

 「われわれはPC革命をよいものだと思っているが、この革命が『共有すること』を忘れさせたことは覚えておく必要がある。タイムシェアリングの考え方は、グループが共有資源のプールを共有し、それによって社会的な力学に影響を与えることができるものだった。ところがPCは、われわれに力を与えてくれたが、同時にバラバラにもしてしまった」

 彼はまた、自分のキーワードやタグに関する研究や、コンピュータによる知性の増強についての研究は、人類のもっとも難しい問題を解くのに役立つとも指摘している。

 シリコンバレーは先駆者たちを賞賛しているが、長生きした場合、彼らをどう扱うべきかわからなくなるようだ。Engelbart氏が作り出したマウスで大金を稼いだLogitechは、彼に永久的に使えるオフィスを提供した。彼の何人かの支援者は、Bootstrap InsituteやBootstrap Allianceの一部として、彼が研究を続けられるだけの少額の資金を提供した。この組織は最近、Doug Engelbart Instituteと名前を変えている。

 われわれが会話を交わしてから10年近く経ったが、Engelbart氏を取り巻く環境はあまり変わらなった。孤独な天才は、資源を得られないまま40年近くもさまよい続けた。

 彼は、まだ完成していないコンピュータ革命があり、彼が終わらせることができなかった重要な仕事があると信じながら亡くなった。

 シリコンバレーは偉大な先駆者の1人を失っただけでなく、研究に出資し、彼が何を作り出すかを見るという素晴らしいチャンスを逸した。彼の研究から、どんな革新的なプラットフォームが生まれ、何千億ドルの産業が生まれただろうか。これは本当に痛ましい損失だ。

 1968年、サンフランシスコで開催されたFall Joint Computer Conferenceで、彼は1000人を超える、世界をリードする計算機科学者の前で、驚くべきデモを行い、コンピュータの世界に火をつけた。

 彼はステージ上で、マウス、キーボード、その他の操作機器の前に座り、コンピュータのディスプレイを背後に置かれた高さ22フィートのスクリーンに投影した。わずか1時間強で、彼はネットワークにつながった双方向的なコンピューティングシステムが、共同研究を行っている科学者の間で素早く情報を共有するのに使えることを示した。

 彼はその4年前に発明したマウスのデモを行い、これがコンピュータの操作に使えるところを見せた。

 彼はテキスト編集、テレビ会議、ハイパーテキスト、ウィンドウシステムのデモを行った。

 当時使われていたメインフレームとは違って、Engelbart氏は「oNLine System(NLS)」と呼ばれるコンピュータ化されたシステムを作り、研究者がシームレスに情報を共有し、構造化された電子的ライブラリの形で文書を作成し、取り出すことを可能にした。

 Engelbart氏のネットワーキングの考え方の重要性は、1969年にコンピュータネットワーク「ARPAnet」が作られ、これによってNLSシステムが接続された時には過小評価されていた。ARPAnetは現在のインターネットの前身となった。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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