デザインとテクノロジの調和で激戦のアパレルECサイト市場を獲る--ドコモ傘下のマガシーク

岡田靖 怒賀新也 (編集部)

2013-07-17 07:30

 デザインや色合い、サイズなど多種多様な商品の中から、顧客の欲しい商品をいかに提案するかが問われるアパレルのネット販売。そのビジネスを10年近く手掛けているマガシークは、変わりゆく流行や顧客層、そしてウェブテクノロジやデザインのトレンドを、どのように取り入れているのか。マーケティング部副部長の石川森生氏に聞いた。

 マガシークは、伊藤忠商事の社内ベンチャーとして現代表取締役社長の井上直也氏が企画し、ファッション雑誌と連動したECサイトとしてスタートした。社名の「マガ」は「マガジン」に由来している。

踊り場からの立て直しに新たな人材を入れて乗り出す

マガシーク マーケティング部 副部長 石川森生氏
マガシーク マーケティング部 副部長 石川森生氏

 「最初は、マガシークのマークを雑誌に掲載してもらい、そこからウェブでダイレクトに買える、という形のサービスでした。おそらくネットでのアパレルの先駆けだったと言えるでしょう」と石川氏は説明する。

 「当時は、赤文字系雑誌(『JJ』『ViVi』『Ray』『CanCam』など二十歳前後の女性を主なターゲットとしたファッション誌)のブームで、「エビちゃん」「モエちゃん」の時代。マガシークはそこで伸びて年商100億円規模になり、さらにはメーカーと組んでアウトレット販売などに乗り出してきました。しかし、続くセレクト系の時代にZOZOTOWNなどが伸びてきた一方で、当社の売り上げは踊り場を迎えました」(石川氏)。

 流行の移り変わりだけではない、10年も事業を続けていれば顧客層の年齢も次第に上昇し、それに応じて好まれるスタイルも変わってくるものだ。そこで立て直しを図るべくウェブマーケティングに力を入れることになり、ECコンサルタントやシステム運営などの人材を数人、中途採用した。その一人が石川氏だった。

 「オンライン決済などやっていたネット金融系のグループ会社で、独立的にECコンサルティングを手掛けている会社に所属していました。このときの顧客の1社がマガシークで、その縁から移ることにしたのです。アパレルだからこそ、という感性の部分と、ITの技術やロジック、二つの軸を中心に取り組んでいます」(石川氏)。

ビジネスの進め方を変えるデータ活用

 立て直しの方針は大きく2つあると石川氏は説明する。

 「ウェブマーケティングや広告の戦略については、リアル店舗にない強みを生かすべくビッグデータ活用を進めています。一方、ブランディングでは、マガシークといえば赤文字というこれまでのイメージを変えようとしています」(石川氏)。

 ビッグデータ活用に関しては、今まさにデータの整理・再構築に取り組んでいるところだという。サイトから得られるデータに加え、購買行動や属性などを基幹系のデータから取り入れ、それらをビジネスに活用する手段を準備しつつある。

マガシークのトップページ
マガシークのトップページ

 「ビッグデータ分析に関しては青写真を描いているところで、まだ道半ばです。データ活用には市販のソリューションを使います。今はキャンペーンマネジメントツールなどを導入し、こちらからプッシュして接客ができるような仕組みを構築しているところです。

 また、顧客の欲しいタイミングで欲しいものを提示できるよう、より深く分析してレコメンド(ツール)にフィードバックします。この分野では、やはりAmazonが先行していますので、テクノロジーで追いつきたい。また、現状では販管費が大きいので、売り上げと販管費が連動しないように、できるだけオートメーション化していくことも重要です」(石川氏)。

 データを経営により生かそうという取り組みも進められている。半自動で作っていた帳票を改め、事業に関するデータを深堀りするためにBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入した。さらに、経営陣向けのダッシュボードを用意してKPI(重要業績評価指標)に設定した数値を時系列で追えるようにするという。

 「KPIの設定値は上がっても下がっても何か理由があるはずです。例えば、この1~2年で少し悪化しているKPIに、同時購入数の減少がありますが、これは送料無料の流れに影響されたものと考えています。送料無料が購入頻度の上昇につながってくれればいいのですが、そのあたりを的確に判断するための材料となる情報更新のリードタイムをもっと短くする必要があります」(石川氏)

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