富士通は8月27日、同社のモバイル製品やサービス群を「FUJITSU Mobile Initiative」として体系化し、モバイルデバイスを中心にしたビジネスを強化すると発表した。
今回のMobile Initiativeは上流コンサルから運用管理までを網羅する。同社で統合商品部長を務める阪井洋介氏は「2012年度のモバイル活用の法人向け商談件数は前年度の4倍、受注件数は6倍と大きく伸長しており、モバイルデバイスの法人への適用が進み、利用シーンが拡大している」と話す。
Mobile Initiative
一方で、富士通ではスマートデバイスに普及に伴う同社のサービス企画、開発、運用などが顧客の要望に対応し切れておらず、これに応えるためにMobile Initiativeを体系化したという。
「7000件の商談実績などに基づき、顧客ごとに最適なモバイル環境の構築を目指す。常時携帯するデバイスである“モバイル”という切り口でヒューマンセントリックなデザインなどワークスタイルの変革やライフスタイルの革新に貢献したい」(執行役員 大谷信雄氏)
最初の取り組みとして、モバイル中心のワークスタイルとは何か、コンセプト作成を支援する「FUJITSU IT Consulting ワークスタイルUXデザインコンサルティングサービス」 を8月から提供する。これまでのモバイル商談の実績から標準化した「FUJITSU Infrastructure System Integration モバイルインフラ構築サービス」を10月から提供する。
さらに、モバイルアプリの開発実行基盤「FUJITSU Cloud PaaS MobileSUITE(MobileSUITE)」も10月から提供する。MobileSUITEは、HTML5をベースにしたモバイルアプリを開発、実行する基盤。PC向けの既存システムもHTML5をベースにしてモバイルデバイスで使えるようになるという。クラウド上の機能としてモバイルPaaS機能や統合管理機能などがあり、端末の中に端末管理エージェント機能などを持つ。これにより、 MobileSUITE上で連携しているHTMLアプリを端末に配信するなど、一元管理できる。
Cloud PaaS MobileSUITE
「現在、スマートフォンのアプリはiOSやAndroid、Windowsなど複数のOS環境下での開発が必要だが、MobileSUITEではHTML5をベースにしたモバイルアプリを提供でき、App StoreやGoogle Playなど公共のアプリストアを経由する必要がない。MobileSUITEは、認証やID管理などの共通の機能をPCのブラウザで管理可能なため、アプリの開発者は業務ロジックの開発に専念できる」(サービス ビジネス本部長 小田 成氏)とし、同ツールを使うことにより開発工数を半減できるとした。
MobileSUITEではSDKや各種API、業務システム連携のためのインターフェースも提供する。MobileSUITEでは2013年度中に50のアプリを開発、社外パートナーに拡大していくとした。
システム導入、運用付加軽減サービスもさらに強化する。10月から提供予定の「FUJITSU Managed Infrastructure Service FENICS II ユニバーサルコネクト」はさまざまなモバイル端末から企業内システムに安全に接続できるリモート接続サービス。2009年から提供し、400社の実績を持つというリモート接続サービス「FENICS II ユニバーサルコネクト」にスマートデバイスで利用できる機能「アプリケーションブリッ ジサービス」を追加した。
Managed Infrastructure Service FENICS II ユニバーサルコネクト
同サービスでは、一般的なAndroidやiOSが搭載されたブラウザでは起動しないウェブシステムを用いるなどして、既存システムの改修する必要なく、端末に情報が残らないようにしている。これに高速画面転送技術「RVEC」を活用して、これまで遅延などで操作が困難だった、スマートデバイスでのリモートデスクトップを実現するという。
「オフラインでも利用できるモバイルアプリケーションを開発したい場合はMobileSUITEがあり、既存業務アプリケーションをセキュアに使いたい場合はFENICS II ユニバーサルコネクトなど多くの要件に対応できる」(小田氏)
これらサービスについて、垂直統合という形で端末や回線、アプリ開発、運用などを網羅している点が同社の強みであるとアピールした。
富士通は、Mobile Initiative全体の2013年度目標を2300億円とし、2015年度には4000億円の事業へ成長させるとした。