F5ネットワークスは8月29日、アプリケーション配信制御(Application Delivery Controller:ADC)アプライアンスのエントリモデル「BIG-IP 800」と、SDN(Software-Defined Networking)対応機能を追加した、BIG-IP管理ソフトウェアの新版「BIG-IP version 11.4」を発表した。
BIG-IP 800は、日本の中小規模市場向けに開発したADCアプライアンス。最大スループット1Gbps、L7での秒間のHTTPリクエスト数は最大10万、秒間のSSLトランザクション処理は500という性能を実現したとしている。価格は、現行のローエンドモデル「BIG-IP 2000」の299万円の半分以下の138万円に抑えた。大規模環境向けで強みを持つ同社が、中小規模市場に参入するための戦略製品と位置付けている。9月から提供する。
アリイ ヒロシ氏
帆士敏博氏
BIG-IP v11.4は、独自OS「TMOS」を含むBIG-IP管理ソフトウェア。新たに、仮想ネットワークの「VXLAN」と「NVGRE」に対応するゲートウェイ機能「SDNゲートウェイ」を追加した。
加えて、ネットワーク内で発生したイベントにもとづいてアクションを実行できる「iCallエンジン」の搭載、アプリケーションの要件に応じてリソースを自動的に拡張する「ScaleN」といった機能も強化している。BIG-IP製品の既存ユーザーは、最新版を適用すれば、これらの機能を利用できるようになる。
新製品の発表にあたり、代表取締役社長のアリイ ヒロシ氏は「当社はADC市場でグローバルでは約49%のシェアが持つが、国内は約31%にとどまっている。エントリモデルを中小規模市場に投入することで、2年後に日本市場のシェアを50%に持っていく」と意気込みを語った。F5の中小規模向け製品投入はグローバルでも初めてで、BIG-IP 800は日本だけで提供されるモデルになるという。
マーケティング本部 シニアソリューションマーケティングマネージャの帆士敏博氏によると、F5の国内市場での位置付けは、品質や信頼性を重視するミッションクリティカル分野ではほぼ独占状態にあるという。だが、100万~250万円の低価格帯では、製品を展開していないためにまったくシェアがない状態にあった。
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同社が実際に企業にヒアリングを重ねたところ、「BIG-IPを導入したいが、価格が問題で他社製品を導入した」との声が多く聞かれた。そこで「品質、機能性はそのままにして、138万円という競争力のある価格設定を行った」(帆士氏)という。
帆士氏は、BIG-IP 800と他社のエントリモデルを比較しながら、価格面だけでなく、信頼性、運用性、柔軟性、コミュニティサイトの有無などの点で突出していることをアピールした。
たとえば、他社のエントリモデルは、運用は手動で行うか外部APIとの連携が必要だが、BIG-IP 800の場合は、BIG-IP v11.4の新機能である「iCall」により、リソースプロビジョニングや障害対応などを自動化することができる。「iRules」と呼ばれるスクリプティング環境を備えるため、コマンドやプロシージャが不足しがちな他社製品に比べて優位性があるとした。