米Dellは現在、PCベンダーから総合ITベンダーに生まれ変わりを図っている。同社が8月27~29日に中国・北京で開催したイベント「Dell Solutions Summit」はその取り組みの成果を展示する格好のショーケースとなった。
会場で同社戦略を中心に、最高コマーシャル責任者(Chief Commercial Officer:CCO)のSteve Felice氏に話を聞いた。「PC市場が縮小するという向きもありハイテク業界の見通しは複雑だ。だが、Dellの戦略は順調とFelice氏は強調した。
--総合ITベンダーへの転身を図るにあたり、競合に対するDellの強みは何か?
今回のイベントで、Michael(Michael Dell氏、創業者兼最高経営責任者=CEO)はインフラ変革、コネクト(モバイル)、情報活用、保護(セキュリティ)という4つのポイントからわれわれのサービスを説明した。これらはセキュリティを土台に連携することで最大の効果を得られる。つまりDellのサービスは、エンドユーザーのデバイスからデータセンターまでを覆う、エンドツーエンドである。技術ベンダーの多くはポイントのみのサービスしか提供していない。エンドツーエンドはわれわれの大きな強みとなる。Dellはどうやってスムーズかつシームレスにサービスが連携するかに注力している。
中堅中小企業(SMB)向けのマーケティングと営業のチームを率いる
エンドツーエンドが重要である理由は、ビジネスを取り巻く環境がコンスタントに変化しているためだ。企業は全体が連携するインフラを構築しないと効果を最大化できないと考える。
例えばクラウド戦略を立てる時には、仮想化だけではなく、エンドユーザーがどのようにクラウドに接続するかまで考える必要がある。また、モバイル端末の利用についてもBYODだけでは不十分である。スマートフォンやタブレットはデータを継続的に収集しており、これらのデータをどうやって活用するのかを考えなければならない。セキュリティも物理とサイバーの両方で、端末からアプリケーションまで見る必要がある。このように、各コンポーネントが相互に接続する必要がある。
もう1つの差別化として、Dellのサービスは標準ベースであるということ。中堅中小企業(SMB)、エンタープライズと企業の規模を問わないし、地域も問わないトレンドだ。もちろん、中国などアジア太平洋地区でも顕著だ。理由は簡単で、標準ベースなら変更が容易で、アジャイルなインフラを構築できるからだ。
--ここ数年多数の企業を買収している。製品をどのように統合していくのか?
構築にあたって業界標準と拡張性の2つの点にフォーカスしており、買収戦略もこれに沿って実行している。容易な管理、セキュリティ強化、相互運用性の3つの特徴を持つ総合ITサービスの提供を目標としており、買収した企業を見ると、いずれもこれらの特徴を実現するものであることが分かるだろう。
例えばSonicWALL、SecureWorksなどセキュリティ関連で買収した多くの企業の技術を、サービスに組み込んでおり、PC側にも統合している。システム管理ではKACEなどを買収しており、業界標準ベースのデータセンターを管理できる。プロビジョニングではGale TechnlogiesやEnstrariusなどを買収、複数のクラウド環境へのアクセスを自動化できる。
これらの技術により、標準ベースのインフラだが、メインフレーム時代に重視されてきた安全性や管理性も提供できる。さらには、メインフレームと比べるとコスト効果も優れる。柔軟性もあり、ビジネスの変更に合わせてソフトウェアを容易に変更できる。
単体のサービスでも同じで、Make TechnologiesとClerityなどの買収を通じて、プロプライエタリのコードを標準ベースにマイグレーションできる。アプリケーションの“現代化”といわれているものだ。例えば、シンガポールの証券取引所はDellが提供するこれらのツールを利用してUNIXベースのレガシーシステムからx86サーバベースのシステムに移行した。得られたのは効率化やコストといったメリットだけでない。アプリケーションは2倍高速になった。このように、Dellは標準ベースへのマイグレーションを包括的に支援できる。