フジテレビは9月から2014年3月にかけて社内の3000台のデスクトップPCをWindows XPからWindows 8に移行開始した。
同社はWindows XPのサポート終了に向け、2010年より社内PCのOSのアップグレードを検討してきた。まず社内の約3000台のデスクトップPCのWindows 8化を決定。2013年9月から3月まで7カ月かけて移行予定という。
フジテレビジョン 情報 システム局長 吉本治氏
移行先にはWindows 8を選択した。将来的にタッチパネルデバイスを含めたモバイル端末の本格的な展開を視野に入れていることが理由。また、情報システム局長を務める吉本治氏は「テレビ局は、新しいものを作るのが命。システム部門といえど、そうしたテレビの創造性に貢献する意識を持ち続ける必要がある」との考えから、最新のOSを選んだとしている。
OS移行での最大の課題は、業務アプリケーションの対応だった。自社開発した業務用アプリケーションが100本以上稼働しており、この中には番組、CMなどを一元管理する「営業放送システム」や報道支援システムといった放送業務の中枢を担うシステム、経理/財務系システム、人事系システムなど基幹系システムが含まれる。
移行の実務を担当した情報システム局システム部システム業務部長の大瀧雅彦氏は「OSの更新自体は2010年ごろから検討してきたが、業務システムは絶対に停止させてはならないものばかりであり、改修見積もりには特に時間をかける必要があった。このためOfficeとInternet Explorerのアップグレードを先行させ、OSの見直しに着手したのは2012年だった。4月から業務アプリケーションとの対応を確認していき、11月に正式移行を決定した」と振り返る。業務アプリケーションの多くは.NET Frameworkで開発されているため、.NET Framework 4.0への対応を確認できたことも大きな要因の1つとなった。
一方、Windows 8自体について、情報システム局システム企画室システム推進部副部長の和泉正憲氏は、Windows 8ならではの機能をどの程度使ってもらえるかに苦心したという。
「せっかく新しいOSに移行するのだから、存分にWindows 8を楽しんでほしい。将来的にはWindowsストア経由で購入したアプリを活用して、各人の創造性を刺激するような最新OSならではの体験をしてほしい」(和泉氏)
今回の対象は3000台のデスクトップPCだが、将来的にはタッチパネルデバイス を含むモバイル端末への展開を検討している。その意味で吉本氏は今回のWindows 8への移行を、本格化するモバイル化への布石と位置付ける。「従来の 基幹業務のアプリケーションを稼働させるだけならば、Windows 7でも8でも決定 的な違いはない。しかし、システムの中に携帯端末が入ってくると話は違ってく る。テレビ業界の変革に対応して何か新しいことを始めるときに、それを支えら れる最新の技術を今から取り入れておこうと考えた」(吉本氏)
さらに、大瀧氏は最新OSならではの長いサポート期間がシステム部の業務の質的向上につながると、運用管理者の視点で評価している。「日本マイクロソフトのビジネス用ソフトウェアは、リリースから10年間サポート期間が提供され、その間アップグレードの作業に追われる心配がなくなる。今後はその余力を業務の改善やアプリケーションの開発など、より本質的なシステムの仕事に振り向けられると期待している」(大瀧氏)
サポート期間を最大限に利用できる点も、最新版を選んだ理由の1つとして挙げている。