米Intersystemsの日本法人、インターシステムズジャパンと日立製作所は10月31日、医療分野のIT活用による事業拡大のため、アプリケーションパートナー契約を締結したと発表した。日立は社会インフラ事業への注力を表明しており、今回も医療分野について電子カルテなどを扱う子会社や部門と、情報通信系の部門などが連携するなど、グループを挙げて取り組む。
インターシステムズは日立に、医療アプリケーションに広く利用されているオブジェクトデータベース「Cache」とアプリケーション基盤「Ensemble」、医療情報基盤「HealthShare」を提供する。
日立製作所 情報・通信システム社スマート情報システム統括本部でヘルスケア事業推進センタのセンタ長を務める森下賢氏とインターシステムズジャパン社長の植松裕史氏
契約締結により、米国をはじめ世界的に医療情報交換システムとして採用されているインターシステムズのソフトウェアと、日立の医療ITの構築ノウハウやシステム導入技術を組み合わせるという。
日立製作所 情報・通信システム社スマート情報システム統括本部でヘルスケア事業推進センタのセンタ長を務める森下賢氏は、インターシステムズを選択した理由として「世界での導入実績があったこと」を挙げる。このシステムを欧米を皮切りに、時期を見てアジアでも展開しようとする日立の戦略に合致していた。
ヘルスケア関連施設において、散在する関連情報を連携させるシステムを構築し、ビッグデータの活用や地域医療、健康管理にいたるまでヘルスケアサービスの効率化を実現する狙いがある。
例えば、複数のヘルスケア関連機関で希望者の医療情報や健診情報を共有することで、地域連携パスや診療・検査予約の取得などを実現するシステムを構築する。
医療費削減などの利点も
実際に、英マンチェスター地域では、患者数の増加や高齢化の進行による医療財源の不足、糖尿病など慢性疾患患者の増加といった課題を持っていた。これに対して、患者の他の医療機関での診療履歴といったヘルスケアデータの共有や、慢性疾患患者の生活習慣改善などにより、重複検査の削減と病気の予防を推進しようとしている。
日立はManchester Academic Health Science Centreなどのこうした取り組みに、ITを活用したノウハウを提供。英国の国営医療サービス機関であるNational Health Serviceなどとともに、散在するヘルスケアデータを統合し、医療資源を効率的に利用するというマンチェスター地域のプロジェクトに4~9月まで参加した。ビッグデータ分析による病気の予防、医療費削減も目指すとしている。さらに、10月からは新たに2年間にわたり、マンチェスター地域のサルフォード地区で安全なヘルスケアデータ統合プラットフォームと生活習慣病対策プログラムの実証プロジェクトを開始した。