IBMは12月18日、今後5年間で人々の働き方、生活、関わり方を変える可能性を持った5つのイノベーション「IBM 5 in5」を発表した。
「IBM 5 in5」
- クラスルームが生徒について学ぶ
- 地元での買い物がオンラインに勝る
- 健康維持にDNAを活用する
- デジタルの番人がオンラインユーザーを保護する
- 都市が市民の生活を支援する
本年のIBM5 in 5では、コンピュータが自ら学ぶコグニティブシステム(脳的システム)の時代の到来により機械が学習、判断し、より自然かつパーソナライズされた方法で人々と関与し、あらゆるものが学習するようになるという見解を検証している。
こうしたイノベーションは、消費者、市民、生徒、患者のプライバシーやセキュリティーに適切に配慮しつつ、クラウドコンピューティング、ビッグデータアナリティクス、学習テクノロジのすべてを活用し、実現に向かいつつあるとした。
5つの予測は次の通り。
クラスルームが生徒について学ぶ
十分な教育を受けることができない人の多さが、世界的に大きな課題となっている。調査によると、地球全体でほぼ3人に2人の成人が高等学校に相当する教育を受けてない。
将来のクラスルームでは、全生徒について学習するためのツールが教師に与えられ、幼稚園から高校、就職まで、1人ひとりの生徒に合ったカリキュラムを生徒に提供できるようになる。今後5年間で、適性検査だけでなく、テストの点数、出席状況、eラーニング基盤上での生徒のふるまいといった時系列データを用いて、各生徒について理解を深められるようになるとした。
クラウド上で高度に分析され、リスクの最も高い生徒や、生徒にとっての障害を予測、生徒が個々の学習スタイルに基づいて課題克服に役立つ手段を提案できるよう、教師の意思決定を支援するという。
IBMの研究員は、すでにクラスルームでの取り組みを始めているという。米国で14番目の規模である学区のGwinnett County Public School(グィネット郡公立学校)での研究プロジェクトにおいて、IBMはビッグデータアナリティクスとラーニングテクノロジを長期的な生徒の記録の人口分析に活用。同プロジェクトの目的は、学習傾向の類似性を見いだし、成績と学習上のニーズを予測、具体的な内容と効果的な指導方法を調整し、同学区の17万人の生徒1人ひとりの成績を改善し、同学区における卒業率向上を目指すとした。
地元での買い物がオンラインに勝る
2012年、全世界のオンライン販売は初めて1兆ドルに達し、実店舗での販売よりも急速に伸びている。オンラインストアには、消費者がウェブ上で実施選択から学習できるというメリットがある。今日、ほとんどの実店舗はPOSから得られる洞察に限定され、実店舗で商品を確かめ、オンラインショップで購入する傾向から、価格のみで勝負しているオンラインの小売店との競争が厳しい。
今後5年で、新たなイノベーションによって地元での購入が復活する。洞察力に優れた小売店は、店舗の即時性と顧客との距離の近さを生かし、オンライン専門の小売店ではまねできないような体験をもたらすことができるようになる。
小売店はIBMが開発した質問応答システム「Watson」のようなテクノロジを活用し、店員を店舗の全商品に通じるようにするという。拡張現実などのテクノロジと、Watsonをアプリケーション開発プラットフォームとしてオープン化するという最近発表された計画により、IBMは買い物客が店舗内でより快適なショッピングを体験できるようにしてゆくとした。
クラウドコンピューティングによってサポートされたモバイルデバイスを使用し、気になるもの、健康や栄養上のニーズ、仮想のクローゼット、SNSを共有できるようにすれば、小売店はいずれ買い物客が最も欲する商品や必要性のある商品を正確に予測できるようになる。店舗は個人向けにカスタマイズされた体験によって、夢中になれる場所へと変化を遂げると予測した。
複数の店舗があることから、買い物客の居場所にかかわらず、即時の店舗受け取りや配送など多様な選択肢を提供できるようになり、配送に2日もかかれば、対応が遅いと感じるようになるとした。