健康維持にDNAを活用する
世界でのがんの罹患率は、2008年以来10%以上増加しており、毎年世界中で1400万人を超える患者を悩ませ、810万人の患者の命を奪っているという。
コンピューターによる支援で、腫瘍が患者のDNAに至るまでどのように影響を及ぼすか医師が理解できるようなり、がんの抑制に最も効果があることが分かっている治療方法の組み合わせが提案されると予測する。
今後5年で、ビッグデータアナリティクスや、新たなクラウドベースのコグニティブシステムの進歩、ゲノム研究や検査における飛躍的進歩が一体となり、世界中の何百万人もの患者に対し、医師が正確にがんを診断、個別化された治療計画を立てられるようになるという。すべてのゲノム配列決定のアウトプットや、蓄えられた医療記録や出版物の広範な情報を徹底的に調べ、学習し、治療の選択肢に関する詳細かつ実用的な洞察をがん専門医に素早く提供するという。
科学者が初めてヒトゲノムの配列決定に成功して以来、遺伝子レベルまで個別化されたがんの治療が期待されてきたが、そのようなツールを利用できる医師や、そのようなレベルで利用できる洞察を評価する時間がある医師はごくわずかしかいない。今後5年間で、クラウドベースのコグニティブシステムにより、個々に対応した医療をこれまでにない規模とスピードで利用できるようになるとした。
IBMではそうした可能性を模索。ヘルスケアパートナーと共同で開発しているのは、遺伝子に関する洞察を提供、これまで患者に最適な治療方法を探すのに数週間から数カ月かかっていたところを、数分から数日まで短縮できるようにするシステムだと説明した。
こうしたシステムは、人々や人々の遺伝子情報、薬剤への反応を学習することでますますスマートになり、脳卒中や心臓疾患のような症状に対して、DNA固有の個別化された治療の選択肢を提供する可能性を開く。よりスマートなヘルスケアを、クラウドを通じてより多くの場所でより多くの人々に届けることができるようになり、世界中の医療サービス提供者のコミュニティーが重要な情報にアクセスできるようになる。
デジタルの番人がオンラインユーザーを保護する
ユーザーはかつてないほど多くのIDやデバイスを使用していながら、極めて断片的なセキュリティー対策おらず、脆弱な状態になっている。2012年には、米国で1200万人超がなりすましの被害にあったという。パスワード、ウイルス対策、ファイアウォールといった従来のセキュリティー対策では包括的に網羅することはできない。このようなルールベースのアプローチは、さまざまな点で不十分である。既知のウイルスや既知の不正行為のみを認識し、通常単一データソースのみに注目するよう設計される。
今後5年間で、1人ひとりが専用の「デジタルの番人」に守られるようになるという。これらは、委託された人やアイテムを重点的に保護するよう訓練され、新たなレベルのID盗難保護を実現する。このセキュリティーは、状況データや過去の データを取り込みながら、さまざまなデバイスで個人の身元を検証する。ユーザーについて学習することで、デジタルの番人は、何が正常で合理的な活動であり、何がそうでないかを推論し、ユーザーの必要性に応じてアドバイザーの役割を果たす。
現在、IBMの研究員は、ネットワーク上のモバイルデバイスの行動を理解し、潜在的なリスクを評価するため、機械学習テクノロジを使用しているという。将来的には、セキュリティーはより俊敏に、そして状況に即するようになり、データ、デバイス、アプリケーションをあらゆる角度から認識し、攻撃やID盗難の予兆と疑われる動きを見分けられるようになるとした。
都市が市民の生活を支援する
2030年までに、新興国の町および都市の人口が都市人口の80%になり、2050年までには10人に7人が都市の住民になるという。
今後5年間でよりスマートな都市では、人々が必要としていること、嗜好、行動、移動の仕方を、コンピュータが学習して理解し、何十億ものできごとをリアルタイムで把握できるようになるという。
都市およびそのリーダーはいずれ、市民から自由に寄せられる新しい情報を基に、どの都市リソースがいつどこで必要になるかを把握できるようになると予測する。都市は、市民のニーズを動的に最適化できるようになる。
モバイルデバイスと社会とが関与することで、市民は都市のリーダーとの関係を築けるようになる。こうした概念は実現に向けてすでに進展しつつあるとした。例えばブラジルでは、ユーザーがアクセシビリティに関する問題を携帯電話を使って報告し、障がいを持つ人々が都市街路をより安全に移動することを可能にするクラウドソーシングツールの開発にIBMの研究員が取り組んでいるという。ウガンダでは、UNICEFとIBMが共同でソーシャルエンゲージメントのツールを開発し、若者が命に関わる問題について政府およびコミュニティのリーダーとコミュニケーションを図れるようにしているという。
都市のリーダーが、問題となっている懸念事項や緊急案件を把握し、必要に応じて迅速に対処するのを支援する上で、そうしたツールの利用が一般的になると予測した。