既報の通り、日立製作所は4月1日付の社長人事を発表した。代表執行役社長に東原敏昭氏が就き、現在代表執行役社長の中西宏明氏は代表執行役会長に就任する。取締役会の議長は、中西氏が兼務する予定としている。東原氏は6月の定時株主総会を経て取締役に就任する。取締役会長の川村隆氏は3月31日付けで取締役を退任し、相談役に就任する。
会長兼CEOに就任する中西宏明氏
社長兼COOに就任予定の東原敏昭氏
取締役を退任する川村隆氏
現取締役会長の川村氏は2010年から赤字回復に尽力してきた実績を話し、2014年3月期について「過去最高営業利益も視野に入れるほどの業績だが、グローバルにはまだまだ優勢とは言えない。社会イノベーション事業をグローバルに展開するため次の世代にバトンを渡し中西、東原にゆだねる」とした。
今回のトップ交代にあわせて日立は最高経営責任者(CEO)と最高執行責任者(COO)制度を導入。中西氏がCEOを、東原氏がCOOを兼務する。「市場変化への迅速に対応するためCEO、COOの職を設定した」(中西氏)。「CEOは主として中長期的な戦略立案を担い、COOは戦略を実行に移す役割となる」と中西氏は説明、東原氏を「仕事への情熱を持ち、フットワークが軽く、現場に強い人」と評した。
2013年12月に社長就任を打診されたという東原氏は、これまでアジアや南米の新興国での現地法人の立ち上げなどグローバルでのビジネス経験が豊富な点をアピールした。
東原氏は「日立の成長基盤を確固たるものにする。経営者の課題を解決するために製品やサービスを束ね、クラウド、ビッグデータなどICTを生かした、きめ細やかなサービス基盤を作る」とし、ICTを有効活用する点を強調した。
東原氏は競合であるGEやSiemensが企業の構造改革に成功している例を引き合いに出し、「日立も構造改革は半ば」とし、スピード感のある日立に生まれ変わる一方、100年のものづくりで培った培った“Safety、Quality、Delivery Time、Cost”という「SQDC」の優先順位を守ると説明した。
日立の強みとして社会インフラ事業やものづくりを挙げるとともに、それらをITと連携できる点が差別化要因であると強調、ICTを重視していく考えを明らかにした。
「われわれの強みは社会インフラ事業とICTを持っていること。納入した後の管理にクラウドやビッグデータを活用するなど製品のライフサイクルから得た知見を顧客の運用管理に使うなどPDCAサイクルを回し、現場密着型のサービスを強みにしたい」(東原氏)
“ICTを使ったきめ細やかなサービス”について東原氏は「例えば(化学プラントなどで使われる)圧縮機を2台納入した場合、年間のオペレーションをリモートで監視し、機械を止められる時間を算出、コスト削減を顧客に提案することできる」と説明。具体例として、ごみクレーンを挙げた。ごみクレーンは1台壊れてしまった時のために2台導入するのが通例という。1台が壊れてしまった時にもう1台を確実に起動させるために遠隔から監視。その結果を顧客に報告するとしている。水処理プラントの稼働状況を遠隔から監視することで、掃除や設備刷新などの時期もICTで判断できるとした。
東原氏は東原氏は、2016年3月期に完了する中期経営計画の実行に注力するとし、売上高にしめる海外事業の割合を50%以上にしたいと意気込みをみせた。