ロンドンの英国王立協会で現地時間6月7日に実施されたチューリングテストにおいて、13歳のウクライナ少年のふりをする「Eugene Goostman」という名前のコンピュータプログラムが、5分間のテキストによるチャットで33%の審査員によって人間だと判断された。このテストは、コンピュータ科学者Alan Turing氏が1950年に考案したものであり、今回の競技イベントは同氏の没後60年を記念して開催された。
審査員には、英TV番組「宇宙船レッド・ドワーフ号」でアンドロイドのクライテンを演じたRobert Llewellyn氏や、2013年におけるTuring氏の死後恩赦のきっかけとなるキャンペーンを率いたSharkey卿が含まれていた。Llewellyn氏はTwitterに「チューリングテストには目を見張らされた。2つの画面の1つには人間が、もう1つにはマシンが割り当てられた5分間でセッションを10回行った。わたしは4回、正解した。小さな賢いロボットだ」とツイートした。参加した人工知能(AI)プログラムは5つであったため、Llewellyn氏はGoostmanにだまされていたはずだ。
レディング大学の客員教授であり、2012年と今回のテストの双方を企画したKevin Warwick氏によると、チャットボットがあらかじめ用意された話題や質問ではなく、自由形式の会話テストに合格したのは今回が初めてだという。
プログラム開発者の1人であるVladimir Veselov氏
提供:University of Reading
Eugene Goostmanの成功の鍵は、その人物像を何でも知っているわけではなく、文法上の、あるいは言葉遣いのちょっとした間違いをおかしても仕方がない13歳のオデッサ出身の少年に設定したというところにある。同プログラムの開発者の1人であるVladimir Veselov氏は「われわれは、信ぴょう性の高い人格を作り上げるために多くの時間を費やした」と述べた。
架空の少年であるEugeneは婦人科医の父親を持ち、ペットとしてモルモット(Guinea pig)を飼っているという。Eugeneは「ぼくのお母さんはいつも、『この汚い豚は、名前に"Guinea"(英国の旧通貨単位)がついているにもかかわらず、ただのブタでしかない』と大声で言っていて、誰でもいいから僕の友達に、誕生日プレゼントとしてあげてしまってほしいと思っている」と語る。Princeton AIのウェブサイトにアクセスすれば、Eugeneとオンラインでチャットできる。
2010年にペンシルバニア州のフィラデルフィアで開催されたChatbots 3.0カンファレンスのプレゼンテーションにおいて、Veselov氏はチャットボットの開発が同氏の趣味であり、同プログラムで最も重要な機能の1つが「タイプミスの修正」であると述べていた。Goostmanはスペルの間違いやタイプミスに遭遇しても、人間やGoogle検索のように意味を理解しようと努めるようになっている。こういった誤りは一般的に、人間よりもコンピュータにとってずっと大きな障壁となるのだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したもので す。