今日、カスタマーロイヤルティ(顧客の忠誠度)が落ち込んでいるとしても、不思議ではありません。消費者市場調査会社であるIRI社の報告書には、「プロモーションで販売された消費財(食品/非食品)の量は、過去1年間で2.7%増加したにもかかわらず、売上高は下落しつつある」と記載されています。
言い換えると、不況を経て、ブランド企業は、安売りによる商品の押し付けや価格競争を繰り広げました。これは、台所事情の厳しい一般消費者には助かりましたが、その課程でカスタマー・ロイヤルティは毀損(きそん)され、ブランド企業にとっては、持続可能な価格帯への復帰が困難となりました。
安売りの結果、カスタマーロイヤルティはどのように損なわれたのでしょうか。問題の根は、低価格そのものにある訳ではないのです。
問題は、特典やポイント、プロモーションを強調しすぎた結果、個性や嗜好、実用性を疎かにしがちであることにあります。こうしたアンバランスを正すには、自社の顧客ニーズや行動について、鮮度の高いインサイトを得る必要があります。幸いなことに、必要なインサイトは、すぐ目の前、すなわち、既存オーディエンスのデータの中に埋もれています。
そして、顧客のニーズや行動は、スモールデータに着目するだけで深く理解できるのです。
手持ちのスモールデータを最大活用する
デジタルマーケターは現在、ビッグデータに関わるイライラに疲労困憊(こんぱい)の状態です。ビッグデータ、サードパーティのデータ、テスト、分析……。
ターゲット市場の行動を予測するにあたって、データが有益で、強力で、必要不可欠な資産であることに疑いの余地はありませんが、そんな今でも、深いカスタマーロイヤルティは、一対一の相互対話により植えつけられ、育てられるものです。
顧客関係を深めるには、スモールデータに着目すべきです。ここでいうスモールデータとは、最も重要な要素以外を削ぎ落したデータのことです。Small Data Group社のアレン ボンデ(Allen Bonde)氏が、洗練された定義をしていますので、以下に紹介します。
「スモールデータとは、(ビッグデータや「ローカルな」情報源から得られる)タイムリーで有意義なインサイトと人々を結ぶものであり、日常業務で利用しやすく、理解しやすく、行動しやすいものとなるよう、一般的には視覚的な形で、整理/パッケージ化される」 。
具体的に説明すると、デジタルマーケターは、スモールデータとして、ソーシャルメディアの「いいね!」や「シェア」、ブランドのアプリで測定される顧客行動、実店舗の販売データ(POS)、カスタマーサポート担当者が記録したコメント、電子メールとランディングページのクリックスルー数、ブログのコメント、その他管理され定義されたあらゆるデータセットを所有しています。これらの咀嚼しやすい観察結果を組み合わせることで、豊かなカスタマー・プロファイルが構成され、デジタル・エクスペリエンスの個別化に役立てることができます。
さらに重要な点として、スモールデータは、どこからでも引き出すことができ、「非集中型データ」のエコシステムから、獲得し、所有し、購入した複数の情報源を統合できます。スモールデータは量こそ劣るものの、それを補って余りある質があります。手持ちのデータに対して、より選択的なアプローチを取ることで、情報の最も重要なパターンが浮かび上がってきます。
個別で実践的なカスタマーインサイトは、今後すぐに「基本の要素」となるはずです。