新規株式公開(IPO)は、スタートアップ企業のライフサイクルにとって重要な転換点となる。株式が初めて一般向けに公開されるからだ。スタートアップ企業の設立者は、自社の努力の集大成を株主や市場の厳しい目にさらすのである。
それでも、IPOを行うことで、今ある企業は、より多くの資本にアクセスできる立場を得られると同時に、メディアに取り上げられることが増え、一般にイメージを定着させることができる。
テクノロジ企業にとって、2014年は、IPO市場が奇妙な状況にあった年だった。TwitterやFacebookなどの有名企業が公開企業としてのスタートで遅い立ち上がりを見せた一方、eコマース大手のAlibaba(阿里巴巴)が実に250億ドルもの資金を調達し、史上最大規模のIPOの称号を手に入れた。
米国バブソン大学の金融学教授であるJohn C. Edmunds氏によると、IPO市場は現在、ベンチャーキャピタル業界と同じく非常に好調のようだ。この状況であれば、2015年にはこの分野でいくらか良い動きが起こるはずだ。
この記事では、2015年にIPOが計画または予想されており、それぞれの市場に大きな影響を与える可能性がある、10社を紹介する。
1. Box
動向がはっきりとせず、テクノロジ業界のあらゆる人が気にかけていたIPOが、企業向けクラウドを提供するBoxのIPOだ。同社は2014年夏に予定していたIPOを延期したが、最近、公募価格を発表し、2015年1月23日に上場した。
コンサルティング企業HarmedaのパートナーであるMax Dufour氏は、Boxによる株式公開が成功すれば、「1つの優れた製品を手がける独立型の会社が、上質かつ革新的で焦点を絞った製品を作ることによって、GoogleやMicrosoftといった大企業の間のすき間市場を見つけられることが証明されるだろう」と語った。
2. Uber
自動車の相乗りサービスを提供するUberが、2015年の注目すべきIPOの1つであることは驚くに当たらない。同社は既に、50億ドル近くのベンチャーキャピタル資金を調達しており、高い企業価値の評価を得ている。
「UberのIPOは、この業界をさらに確立し、世界規模の企業の力を高めるだろう。こうした企業は、数年前には存在していなかったが、すぐに利用でき、使い勝手が良く、費用のかからない移動手段への消費者の需要によって後押しされてきた」(Dufour氏)
Uberは、独自の市場をより確固としたものにするのに加えて、タクシー業界をさらに揺るがすことになるだろう。Edmunds氏は、このことはニューヨーク市のように、メダリオンと呼ばれるタクシー免許証のシステムを採用している場合に特に当てはまるとしている。ニューヨーク市ではかつて、メダリオンに100万ドルもの価格が付いていた。
「本当に悲鳴を上げているのは、そういう人たちだ。Uberが成功すれば、彼らのメダリオンは価値がなくなってしまうからだ」(Edmunds氏)
3. Square
クレジットカード決済業界は、しばらく前から革新の時期を迎えていた業界であり、その革新の先頭に立ってきたのは、モバイル決済サービスのSquareである。同社は、スマートフォンやタブレットをPOS端末に変える、正方形のクレジットカードリーダーで有名だ。
Dufour氏は、利益率と手数料の高さ、そしてカスタマーサービスの悪さで知られている業界において、SquareのIPOにより、シンプルなユーザーインターフェースを使った簡単なモバイル決済という価値提案が裏付けられるだろうと語っている。
4. Cloudera
ビッグデータ業界で、Cloudera以上に知られている名前はほとんどない。同社は、オープンソースプロジェクトのHadoopをエンタープライズ向けに展開している。現時点で、Clouderaは10億ドル以上を調達しており、およそ1000社のパートナーを含むエコシステムを構築している。ビッグデータがエンタープライズ分野に不可欠なものになりつつあるなかで、Clouderaは、公開市場であらゆる競合相手に打ち勝ち、エンタープライズ向けのHadoopプロバイダーとして市場を支配できるような戦略的立場にある。