山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

あの世の故人にiPhoneやiPadまで送る、中国の「清明節」

山谷剛史

2015-04-14 06:00

 中国では2015年は4月5日に「清明節」という伝統的な祭日があった。この日は故人を偲び、親族が集まりお墓参りに行くのが伝統的だ。中国全土に散らばった親族が集うため、ちょっとした民族大移動が行われ、清明節を挟んだ3日間が連休となる。墓地周辺や、田舎の通りでは、時限的に各個人店舗がお墓参り用品を販売するようになる。


路上の墓参りグッズ販売店。車も売られている。

 地域によって風習は様々。後述の「冥幣」を燃やす以外は、各地で独自の行動をとる。たとえば筆者が参加したものの中で変わったところでは、清明節になると、各商店でケーキ大のサイズのカステラのようなものを販売し、墓前に供えた上で、切り分けて親族全員で食べるというものがあった。

 さて墓参りでは、「冥幣」と呼ばれる紙幣の札束を燃やす(現世では利用はできない)。故人があの世においてもお金に困らないように、というのがその目的で、札束以外にも同様の目的で折り紙サイズの金紙や銀紙を大量に準備して燃やす。中国元の高額紙幣は100元札が最高額なので、100元札がメイン、そして「天地通用銀行」「天地銀行」発行の紙幣が中国全土に流通している。それもそのはず、冥幣を印刷するための紙幣印刷機が流通しているため、同じデザインになることが多いのだそうだ。


燃やすための冥幣の札束。

 とはいえ、各商店で売られる冥幣を見てみると、万の単位や億の単位の冥幣や、中国元に似たデザインの冥幣や、アメリカドルや日本円の冥幣もある。札束を燃やすのは環境に悪いし、延焼の可能性もあるからという現世の消費者のニーズに応え、天地通用銀行発行のクレジットカードやキャッシュカードもある。

 紙でできたiPhoneや携帯電話やパソコンも比較的多く売られている。数年前はフィーチャーフォンやWindows搭載ノートパソコンをよく見たが、最近は印刷されたiPhoneにiPad、iMacが目立つ。変わったところでは、日本のフィーチャーフォンのモックアップが中国の斎場に流れ着き、故人のために燃やされるというレポートもある。


WindowsとAppleとNVIDIAとATIのロゴが共存するハイクオリティノート(紙製)。

 筆者がヒアリングした限りでは、iMacを買った人は結局Windowsをインストールして使っているし、スマートフォンやタブレット選びではアプリをいろいろ入れて活用するヘビーユーザーはAndroidを、メンツを重視する人はiPhoneやiPadを選ぶ傾向にある。どうにも中国人社会で生きるには、あの世に旅立ってもなお、金だけでなく、メンツが重要らしい。

 価格については、天地通用銀行発行の100元札100枚の札束が2元(約40円)程度から、iPhoneとiPad、Androidスマートフォンをセットにしたモバイルセットが10元(約200円)からと、リーズナブル。

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