OracleはRed Hat互換のOracle Linuxをオープンソースソフトウェアとして提供している。その他にもOpenStackへの対応やDockerのサポートなど、オープンソース系のソフトウェアに積極的に対応している。そんなOracleがこだわっているのが、顧客がオープンソースソフトウェアをOracleが求めるエンタープライズのレベルで利用できるようにすること。Oracle Linuxの開発総責任者を務めるWim Coekaerts氏に同社の取り組みについて話 を聞いた。
エンタープライズ用途ではRed Hatには足りないところがある
--OracleはRed Hat互換のOracle Linuxを提供しています。Red Hatは、Oracleが求めるエンタープライズのレベルで何が足りないのでしょうか。
Oracle CorporationでOracle Linuxの開発総責任者を務めるWim Coekaerts氏
Coekaerts Red Hatの最大の課題は拡張性です。IntelのCPUの進化を見ても、コア数などはかなり増えています。Linuxの開発コミュニティはたしかに巨大ですが、ハイエンドなシステムを使って開発できる人はほとんどいません。テラバイトクラスのメモリを使っている人もいないでしょう。Oracleでは8ソケットのシステムでメモリが6T~8Tバイトという環境で検証しています。もちろんOracle Databaseも使っています。
Oracle DatabaseやJavaに向けたOSの改善点は、Linuxで動かす全てのソフトウェアで役立つでしょう。Oracle Databaseにだけ最適化したLinuxカーネルでは、ユーザーからは受け入れてもらえませんから。当然、PostgreSQLにも役立ちます。
もう1つ足りないのが安定性です。Oracleは1000台単位のアクセス規模で検証しています。これは個人の開発者が自宅のデスクトップで開発しているのとは全く異なります。Red Hatはそれより多いかもしれませんが、数百台程度でしょうか。
もう1つ、Red HatなどのLinuxディストリビューションでは診断系の機能が足りません。これは開発コミュニティがあまりこの領域に興味がないからです。一方で顧客は性能診断機能などを気にします。Oracleとしては顧客が気にするところには力を入れます。
4つ目が、サポート組織の体制です。Red Hatであれば当然ながらサポートするのはOSの部分です。Oracleは、OSはもちろん、その上で動くOracle Databaseも一緒に問題解決できます。これはアプリケーションサーバのWebLogicでも同様です。われわれとしてはRed HatのサポートがOracle Databaseの知識を持っていないのは問題です。
これは、かつてのUNIXのビジネスモデルをLinuxでも実践していることでもあります。IBMのAIXのサポートでは、その上で動くOracle Databaseは重要なので、彼らがOracle Databaseのことも考えサポートしていました。これはHP-UXでも、かつてのSolarisでも一緒です。UNIXの時代と同じレベルのサポートを提供する、これが思想部分でRed Hatと違うところです。
--具体的にOracle LinuxとRed Hatではどこが違うのでしょうか。
Coekaerts Linuxでディストリビューションを作るのは、それほど難しいことではありません。Red HatとSUSE Linuxでは、おそらく中身の9割方は一緒でしょう。そうであるのに、また別のディストリビューションをOracleが出すことには意味がありません。むしろディストリビューションを増やしユーザーを混乱させるだけです。Oracleとしては、Linux OSのメインラインに沿うようにしています。メインラインでの改善が、Red Hatに確実に反映されるようにと考えています。