IBM、量子コンピュータの実現に向けてさらに前進

Larry Dignan (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2015-05-01 12:33

 IBMは米国時間4月29日、コンピュータ業界が目指している実用的な量子コンピュータの実現を阻む2つの大きな壁を乗り越えたと発表した。

 IBMが乗り越えた壁の1つは、2種類の量子エラーを同時に検出するというものだ。これらのエラー、すなわちビットフリップエラーと位相フリップエラーは、量子エラー訂正という問題を解決するうえでの前提となっている。今までは、1度に1種類のエラーしか検出することができなかった。

 量子エラーは、熱や電磁放射、素材上の欠陥などに起因する干渉によって引き起こされる。こういった干渉はすべてプロセッサ内で起こり得るものだ。従来のコンピュータが扱う古典ビットは2つの値、すなわち1と0で構成されている。その一方で、キュービット(qubit)とも呼ばれる量子ビットは値として1と0を量子力学的に重ね合わせた状態を保持できるようになっている。1と0を重ね合わせた状態を保持することで、量子コンピュータはずっと高速に計算処理を実行できるようになる。

 IBMが乗り越えたもう1つの壁は、4量子ビット分の回路をスケーラビリティのあるかたちで、4分の1インチの正方格子構造内に構築するというもの。同社は、この正方格子構造が実用的なシステムを構築するための量子ビットの追加方法として最適だと主張している。IBMが標準的なシリコン構造上に信頼性のあるかたちで量子ビット構造を製造できるようになれば、量子ビットの追加はずっと簡単になるはずだ。

 量子コンピュータの重要性を突き詰めると、ムーアの法則にたどりつく。2年ごとに1チップ当たりのトランジスタ数が2倍になるという、ちょうど50年前に生み出されたこの法則は、長きにわたって維持されてきたが限界に近づきつつある。

 とは言うものの、実際に使いものになる量子コンピュータの実現はまだまだ先になるだろう。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    KADOKAWAらの事例に学ぶ、2024年サイバー攻撃の傾向と対策

  2. セキュリティ

    MDMのよくある“12の悩み”を解決!Apple製品のMDMに「Jamf」を選ぶべき理由を教えます

  3. ビジネスアプリケーション

    生成AIをビジネスにどう活かす?基礎理解から活用事例までを網羅した実践ガイド

  4. セキュリティ

    セキュリティ担当者に贈る、従業員のリテラシーが測れる「情報セキュリティ理解度チェックテスト」

  5. セキュリティ

    「100人100通りの働き方」を目指すサイボウズが、従業員選択制のもとでMacを導入する真の価値

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]