日本マイクロソフト Officeビジネス本部 プラットフォームマーケティンググループ シニアプロダクトマネージャーの冨士野光則氏
Office 365 ProPlusを含む有償ライセンスには「E3」と、エンタープライズVoIPも 使える「E4」があるが、Officeビジネス本部 プラットフォームマーケティンググ ループ シニアプロダクトマネージャーの冨士野光則氏は、「教育機関でOffice 365 ProPlusを導入する方法として、全ユーザーでE3/E4を契約するよりも“Student Advantage”特典の利用を推奨している」と説明する。
Student Advantageは、Office 365 EducationのE1(無償)ライセンスに加えて、教職員全員分の「Office 365 ProPlus/Office ProPlus」ライセンスを包括契約(教育機関向けライセンス「EES」または「OVS-ES」の契約)で保有している教育機関に所属する学生が、Office 365 ProPlusを無償で利用できる特典だ。「教職員と学生全員でE3ライセンスを契約するよりも、包括契約を結ぶ方が低コストだ」(冨士野氏)
遠隔授業を足がかりに高校以下へ展開
現在、国内市場においてOffice 365 EducationやGoogle Apps for Educationの教育機関向けクラウドサービスのユーザーは、ほとんど大学生だ。今後の課題は、高校や小中学校への展開になるだろう。小中学校への導入は、1人1台端末といった各自治体の教育ICT環境整備と平行して、緩やかな時間軸で進行すると予想される。
一方で、高校については、4月1日の学校教育法施行規則改正により、オンライン会議システムなどを利用した遠隔授業が高校卒業に必要な履修単位として認められるようになったことを受けて、一足飛びに導入が進む可能性がある。
4月20日に、日本マイクロソフトは慶應義塾大学SFC研究所プラットフォームデザイン・ラボと共同で、Skype for Businessを活用した高校の遠隔授業モデル構築に向けた共同研究を行うことを発表している。この共同研究では、「全国すべての高校へ導入可能な遠隔授業プラットフォームの汎用モデルを検討する」としており、全国の高校の遠隔授業基盤を、Office 365 Educationで無償提供しているSkype for Businessで固めたい狙いがあると見られる。
法改正で競合Google反転攻勢も
日本マイクロソフトにとって、今回の高校遠隔授業の法改正は僥倖ではない。3月2日に、霞が関で開催された高校以下の遠隔授業に関する会合には、慶應義塾大学 政策学部教授の國領二郎氏、衆議院議員で「教育における情報通信の利活用促進をめざす議員連盟」会長の遠藤利明氏らに混じって、Microsoft InternationalのプレジデントであるJean-Philippe Courtois氏、日本マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏の姿があった。ITベンダーとして参加したのは同社だけである。
(左から)衆議院議員の遠藤利明氏、慶應義塾大学 政策学部教授の國領二郎氏、Microsoft International プレジデント Jean-Philippe Courtois氏、日本マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏(写真提供:慶應義塾大学SFC研究所)
同社が、Office 365 Educationの高校以下への展開の足場になることを見越し、遠隔授業に関する法改正に向けて積極的な働きかけを行ってきたことがうかがえる。
ただし、この法改正の実現で、Office 365 Educationのシェアが安泰になるわけではない。競合Googleも、Google Apps for Educationに無料ビデオ通話機能「ハングアウト」を搭載しているほか、Google Appsに統合される安価なビデオ会議端末「Chromebox for meetings」といった製品を有している。教育市場向けに「Chromebook」の出荷も始まっており、遠隔授業に関する法改正がGoogle Apps for Educationのシェア拡大に働く可能性もある。
Yahoo!メールユーザーの取込合戦にも注目
国内におけるOffice 365 EducationとGoogle Apps for Educationのシェア争いに関して、もう1つ気になるトピックがある。
2016年6月に、ヤフーが提供していた教育機関向けメールサービス「Yahoo! mail Academic Edition」が終了する。これを受けて、サイオステクノロジーがYahoo! mail Academic Editionから、Office 365 EducationまたはGoogle Apps for Educationへのメール移行支援サービスを開始した。教育機関のYahoo!メールユーザーをどちらが多く取り込むのか、今後の動向に注目したい。