富士通、IoT活用のLSIやミドルウェアをパッケージ化--HMDも提供 - 5/6

大河原克行

2015-05-11 17:59

 富士通は5月11日、同社ユビキタスプロダクトビジネスグループが取り組む“モノのインターネット(Internet of Things:IoT)”ビジネスについて説明。IoT環境に最適化したミドルウェアパッケージとユビキタスデバイスの試作品などを発表した。

 執行役員常務でユビキタスプロダクトビジネスグループグループ長の斉藤邦彰氏は、「IoTが注目を集める一方で、多種多様なセンサから生成される膨大なセンシングデータの取り扱いでは課題がある。加えて、IoTの広大な用途では案件ごとに大きな開発規模を要し、設計の共通化や横展開が難しい点などの課題もあるほか、データのセキュアな環境を実現する点などにも課題がある」と説明した。

斉藤邦彰氏
12月から提供予定のバイタルセンシングバンドを身につける斉藤邦彰氏(富士通 執行役員常務 ユビキタスプロダクトビジネスグループ長)

 「富士通では、独自のアルゴリズムでセンサデータなどをすぐに活用できる形で提供できること、IoTに必要となる機能をパッケージ化することで活用を容易にすること、そして、富士通が得意とする生体認証によるセキュアな環境を提供できる。これに実現したのが、人やモノの状態や状況などをセンシングし、解析、分析できるデータの提供が可能なIoTパッケージの“FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE(ユビキタスウェア)”だ」(斉藤氏)

 ユビキタスウェアは12月から提供する。ユビキタスウェアを組み込んだ第1弾製品として「ユビキタスヘッドマウントディスプレイ」を5月11日から発売している。ユビキタスウェアを組み込んだ「ロケーションバッジ」「バイタルセンシングバンド」なども12月から市場投入する。

IoTは鍛えてきた技術と経験を活かせる時代

 今回発表したユビキタスウェアは、加速度や気圧、ジャイロなどの各種センサと、それを直接制御し、解析、分析する専用マイコン、Bluetooth Low Energy(BLE)対応の無線通信機能、ヒューマンセントリックエンジン搭載のLSIなどを組み合わせた「ユビキタスウェアコアモジュール」と、クラウド側でデータを学習、分析し、複数のプラットフォームで利用可能なセンサ活用ミドルウェア(センシングミドルウェアとロケーションミドルウェア)で構成される。

 既存システムにも容易に組み込めるほか、組み込みデバイスとしても製品を提供できる。「富士通独自のアルゴリズムであるヒューマンセントリックエンジンによるセンシングデータの解析、分析によって、ユーザーがそのまま利用できるデータが提供でき、IoTヒジネス変革を支援できる」という。

 運動強度測定、姿勢検知、転倒検知、測位、熱環境レベル検知、身体負荷レベル検知などが可能であり、これらを活用し、製造、医療、流通、農業、金曜、交通などの分野ごとにトータルのソリューション提案を行えるという。

 具体的な事例として、斉藤氏は「病院でスタッフや顧客、医療機器の位置を確認してサービスの効率化につなげる院内サービスの効率化、工事現場の作業者の熱中症対策などでの安全性向上への利用、高齢者の生活をセンサで見守り、異常事態を把握できる遠隔地からの見守りサービス、ヘッドマウントディスプレイを活用した正確な保守点検業務の遂行への活用、自動車運転時の眠気検出による安全運転支援などに活用できる」と述べた。

 第1号製品となるユビキタスヘッドマウントディスプレイは、850×480ドットの0.4型ディスプレイを搭載。片目およびシースルー形状の製品としている。カメラやマイク、各種センサを搭載しており、腕に装着できるウェアラブルキーボードや音声による操作が可能であるほか、IPX5/7の防水、IP5Xの防塵対応となっている。屋内外や高所などでの利用を想定。保守点検業務や製造工場での組立作業などに利用できるとしている。米Kopinのヘッドマウントディスプレイ技術に、富士通のヒューマンセントリック技術を融合させて開発したという。

 OSにはAndroid 4.4を搭載し、CPUにはAPQ8026 Quad Core 1.2GHzを採用した。バッテリ駆動時間は約4時間、本体重量は約315g。その他装着品が約78g、ヘルメット装着クリップが45g。ヘッドマウントディスプレイの価格はオープン。「ソリューションとして提案していくことになる」として、単体の市場想定価格は公表しないという。

 斉藤氏は、「2020年には500億個のモノがネットにつながり、40ゼタバイトのデータがやりとりされる。富士通はヒューマンセントリックなイノベーションに取り組み、人を幸せにすることを目指している。ユビキタスフロントとなる各種デバイスは、ICTと人とのインターフェースであり、ヒューマンセントリックな世界を実現するには重要なものである。IoTは、富士通が鍛えに鍛えてきた技術と経験を活かせる時代の到来だといえる。ヒューマンセントリックエンジンによる人を中心としたセンシング技術と、安心安全を支える高度かつ使いやすい富士通のセキュリティ技術はIoTに活用できる」などと語った。

 ユビキタスIoTビジネスの事業計画については、「具体的な売上目標は現時点では設定していない。2016年度から飛躍的に伸ばしたい」と述べた。今回発表した技術や試作品は、5月14日から東京国際フォーラムで開催される富士通フォーラムのユビキタスウェアブースに展示される予定だ。

ロケーションタグ。屋内外での位置を測定する。商業施設や倉庫などでモノの位置をリアルタイムに把握できるという

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