被害を公表する時代になっている--パロアルトCSOが指摘するセキュリティの変化

怒賀新也 (編集部) 2015年09月03日 17時16分

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 「今後アンチウイルス対策は機能しなくなるかもしれない」

 こう話すのは、次世代ファイアウオールやネットワークセキュリティ製品を提供する米Palo Alto Networksの最高セキュリティ責任者(CSO)、Rick Howard氏だ。攻撃の巧妙化により、半分以上の攻撃が検知されずにすり抜けているとして、2014年に米セキュリティ企業が「アンチウイルスは死んだ」と指摘し、それがセキュリティ分野の関係者の間で話題になっていることも背景にある。

米Palo Alto Networksの最高セキュリティ責任者(CSO)、Rick Howard氏。米Palo Alto Networksの最高セキュリティ責任者(CSO)、Rick Howard氏。米陸軍に23年間従事し、情報技術やコンピュータセキュリティを含む事業に携わった。最後の2年間は軍のコンピュータ緊急対応チームのチーフを務めた。軍隊のグローバルネットワーク防衛やネットワークインテリジェンスに携わり、2004年に中佐として引退した
米Palo Alto Networksの最高セキュリティ責任者(CSO)、Rick Howard氏。米陸軍に23年間従事し、情報技術やコンピュータセキュリティを含む事業に携わった。最後の2年間は軍のコンピュータ緊急対応チームのチーフを務めた。軍隊のグローバルネットワーク防衛やネットワークインテリジェンスに携わり、2004年に中佐として引退した

 Howard氏もこれに沿った意見を持つ。サイバー攻撃と一口に言っても「攻撃ツールだけでなく、スパイ、戦闘行為などさまざまな動機がある。どれについても、攻撃者からすればいくつかのプロセスを組み合わせた一連の攻撃が必要になる」という。防御するためには、ポイント製品ではなく、統合したシステムが必要になってくる。

 Palo Altoは、脅威情報を集める組織を社内に持ち、Howard氏が責任者を務めている。「週に2000万件のマルウェアのサンプルを集めているが、それが多いというわけではない」とのこと。

 重要なのは、情報を集めた上で、「攻撃のライフサイクル」に従って、ホワイトリストやサンドボックスなど、さまざまな手法で防御策を打つ――事前に定義したファイルで検知するという発想が、そろそろ通用しなくなってきていることを強調している。

 ここ2、3年で急増していると言われるサイバー攻撃の数について同氏は、攻撃の数自体の増加ももちろん考えられるとしながら「検知する技術が高まったこと、攻撃を受けたことを公表するようになってきていることにより、従来は表に出なかったものが出てきている可能性もある」と指摘した。

 サイバー攻撃を受けたと初めて公表した企業は2010年のGoogleではないかという同氏。最近は、数カ月から年単位で企業のシステムに潜伏し、たくみに痕跡を消しながらクレジットカード情報などを盗み出すようなケースが増えている。外部のセキュリティ企業の指摘で初めて攻撃を受けていることを知るような例も多くなってきていることから、「攻撃による被害を隠すのではなく、公表する時代になってきている」とHoward氏は話した。

 また、「フォレンジック」がキーワードとして注目されていることについては、攻撃の詳細を知ることは重要だが「被害を受けてから使うものであり、事前に防ぐことよりも重要であるはずがない。担当者からすれば、被害を防げなかったことを自ら証明してみせるようなものだ」と、ややシニカルな表情を浮かべて見せた。

 取材には、日本法人のパロアルトネットワークス合同会社副会長の齋藤ウイリアム浩幸氏も同席した。内閣府本府参与という肩書きで、国としてのセキュリティ対策の立案も担当するという齋藤氏。

パロアルトネットワークス合同会社副会長の齋藤ウイリアム浩幸氏。内閣府本府参与も務める。2012年に総理大臣直属の国家戦略会議で委員となり、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(NAIIC)でITなどのインフラ設備構築を担った
パロアルトネットワークス合同会社副会長の齋藤ウイリアム浩幸氏。内閣府本府参与も務める。2012年に総理大臣直属の国家戦略会議で委員となり、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(NAIIC)でITなどのインフラ設備構築を担った

 先日の年金機構の情報漏えい事件について「実は日本における典型的な漏えい事件ではないか」との認識を示した。「セキュリティは、安全性、コスト、利便性という3つの点からなる三角形でなりたっている」とのこと。この形が崩れると、セキュリティ面での弱さが露呈してしまう。

 立場上、このあたりの事情をよく知っているという齋藤氏は「安全性を重視してガチガチにしたことで、利便性が下がり、結果として担当者が“おかしなこと”をし始めたのではないか」と見ている。今回の事件では、基幹系システムで管理しなくてはいけない個人データが、情報系システムの端末にコピーされて使われており、電子メール経由で仕込まれたウイルスにより、その情報系システムからデータが漏れたと言われている。

 Howard氏は米国でも同様の事件があったとし、「こうした事件によって、セキュリティ業界は、データを塊として見るだけでなく、境界線をより意識する方向に変わってきている」とコメントした。

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