これまでのところ、Microsoftの関係者らは「Windows 7」ユーザーが「Windows 10」に移行すべき理由について、論理立った説明をあまりしてきていない。
確かにWindows 10では、なじみのあるスタートメニューとほぼ同じものが復活し、「Cortana」が統合されたのは良いことだ。だが、それらはユーザー、特にビジネスユーザーが、Windows 7という十分に試行され、ありがたいことにきちんと動いているOSから移行するきっかけとなるような機能ではない。
筆者は、Windows 10だけに搭載されているセキュリティ機能がビジネスユーザーを引きつけるだろうと考えている。今まで、特に最近は、Microsoft関係者はこうした機能についてあまり多くを語っていない。少なくともその理由の一部には、ビジネスユーザーへのセールスポイントになりうるし、そうするべきWindows 10のセキュリティ機能の多くがまだ全面的には導入されていないということがあるかもしれない。
Microsoftは確かに、パスワードなしでWindows 10搭載デバイスにサインインできる、新しい生体認証技術「Windows Hello」の宣伝はしてきている。Helloは指紋と顔認識を使って認証するため、新しいハードウェアが必要になる。Helloは、「Home」「Pro」「Enterprise」「Education」など、さまざまなWindows 10エディションの全てで利用可能だ。一方で、一部のWindows 10ユーザーしか利用できないセキュリティ機能も数多くある。
マイクロソフトは先週、2015年前半に大きく宣伝し、約束していた「Enterprise Data Protection」と企業向けの「Passport」機能がWindows 10にまだ搭載されていないことを明らかにした(状況を正しく把握すれば、Microsoftは、Windows 10にはこうした機能や、約束していた「Windows Store for Business」といった機能が欠けていることを、さまざまな場所で実際に認めている)。
Microsoftはこうした機能を、9月末までにWindows 10プレビュービルドに組み込み、2015年中、おそらく晩秋には、「Threshold 2」(開発コード名)リリースの一部として提供する計画だ。
しかし、同社が驚くほど少ししか宣伝していない、Windows 10のセキュリティ機能はほかにもある。
その1つが、ドライブ暗号化機能の「BitLocker」だ。この機能はWindows 7に搭載されていて、Windows 10でも引き続き採用されたものだが、Microsoftはこれを利用できるユーザーグループを拡大している。Windows 7では、BitLockerを利用できるのは「Ultimate」と「Enterprise」エディションのユーザーだけだった。Windows 10では、Pro、Enterprise、Educationのユーザーは全員利用できる。
ほかにもある。次の表は、筆者がMicrosoft Download Centerで見つけた、Windows 7とWindows 10のセキュリティ機能を比較した表だ。
既に書いた通り、この表にある機能の一部、具体的にはEnterprise Data Protectionと、企業向けのPassportは、Windows 10ユーザーはまだ利用できない。
Enterprise Data Protection(EDP)は、現在Windows 7に搭載されている、データ損失防止機能をベースとしたものになる。しかしEDPは個人データと企業データをコンテナで分離するという、さらに進んだものになっている。EDPは「Azure Active Directory」と「Active Directory Rights Management Services」と統合される予定だ。Microsoftは、EDPが「モバイルデバイスとデスクトップをシームレスにつなぐユーザーエクスペリエンス」を提供するとしている。Windows 10 Pro、Enterprise、Educationの各エディションのユーザーはEDPを利用できるようになる。