Linus Torvalds氏は先頃、アイルランドのダブリンで開催されたLinuxCon Europeで「ARMに進歩が見られるのはうれしい限りだ。近いうちには私はARMチップ搭載マシンを手に入れるだろう。そういった製品の登場は2015年だと言われていたが来年になるのかもしれない。2016年はARM搭載ノートPCの年になるだろう」と語った。
報道各社は同氏のこの言葉に飛びつき、「Linus Torvalds氏、2016年がARM搭載ノートPCの年になると発言」といった見出しで報じた。
確かに同氏はそう語ったが、その語り口まで正しく捉えられたわけではなかった。
Torvalds氏は自身のGoogle+フィード上で、Linuxカーネルのマネジメントスタイルの一文である「インターネット上では、誰も微妙なニュアンスを読み取ってくれない」という言葉を掲載し、「どうやら、『インターネット』という言葉は『ステージ』という言葉でも置き換えられるようだ」と記した。
そして同氏は、「2016年がARM搭載ノートPCの年になる」という発言は額面通りに受け取られるべき性質のものではないと続けた。
同氏が「主張しようとした(そしてうまく伝えられなかった)」のは、「ARM版の(Linux)カーネル開発マシンの普及を何年も前から待っているが、常に『来年は』と言われている状況のこと」だったのだという。
同氏が本当に「期待している」のは、「単なる製品化が目的ではなく、実際に開発に使用できるちゃんとしたARM(できればARM64)搭載マシンが、いつか登場するのを目の当たりにすることだ。『Raspberry Pi』や『BeagleBoard』などは使っていて楽しいし、すべての携帯電話や『Chromebook』の販売は好調だが、開発者として市場にまだ欠けているものがあると感じている」という。
同氏の言う欠けているものとはLinuxデスクトップだ。同氏はLinuxデスクトップの飛躍を期待し続けているのだ。
ただ筆者は、Linuxデスクトップの飛躍は難しいと考えている。とは言うものの、ARM搭載ノートPCが登場するのは良いことだ。Microsoftは、ARMチップを搭載した「Surface RT」で、「Windows」の機能削減版となる「Windows RT」を採用せざるを得なかった。しかし、LinuxであればARMチップ上でもフルセットの機能を実現できる。
ARMチップを搭載したLinuxサーバ製品は、Red HatやSUSE、Canonicalといった各社が売り込み攻勢をかけている。その一方で、ARMチップを搭載したLinuxデスクトップ製品は強力な支持者を欠いている状態だ。もちろんTorvalds氏は別にしてだ。とは言うものの、Torvalds氏はハードウェアベンダーではなく、単なるソフトウェア開発者でしかないのだ。

Linus Torvalds氏
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。