シアトル発--Linux Foundationが開催している「LinuxCon」で米国時間8月19日、Linuxの父であるLinus Torvalds氏が基調講演に「サプライズ」登場した。
Linux FoundationのエグゼクティブディレクターJim Zemlin氏はTorvalds氏とのQ&Aセッションで、先にBloombergが掲載した「Torvalds氏はこの20年間で最も経済面で影響力があった個人」という記事を取り上げた。Henry Fordが100年前にもたらしたのと同じように、Torvalds氏は現代の経済で生産ラインを一新するのに貢献したという主張だ。
Torvalds氏は「自分がそんなにパワフルだとは思わないが、オープンソースの功績が認められたことを嬉しく思う」と述べた。Torvalds氏はおそらくBill Gates氏、Steve Jobs氏、Larry Ellison氏よりも技術における影響力が大きいが、おもしろいほど控えめだ。これこそ同氏がLinuxのリーダーであり続ける理由の1つだろう。
コードの品質を除くと、Torvalds氏は自分のことに深刻にならない。同じ記事でTorvalds氏が「身長5フィート(約152cm)で大きなお腹、その体型と動き方はLinuxのペンギンマスコット『Tux』を思わせる」とも形容されていたことにZemlin氏が触れると、Torvalds氏は「それ何?ロースト?」と笑って述べた後に、身長は5.8フィート(約177cm)が正確な値だと付け加えた。
真面目な話もあった。2015年のLinuxConはまるで「DockerCon」といってもおかしくなかったが、Zemlin氏が現在のコンテナブームについて意見を求めたところ、Torvalds氏は次のように答えた。「カーネルがコンテナやその他のバズワードとは無縁でよかった。われわれの関心はカーネルだけだ。私はカーネルにフォーカスしていて、(それ以外は)気にしない。カーネル以外の政治的なことには関与していない。何も知らなくて本当に良かったと思っている」。
Zemlin氏は次に、IoT(Internet of Things)から寄せられている小規模なLinuxカーネルに対する高い需要についてどう思うかと尋ねた。「小規模なカーネルを望む声は以前から常にあった」とTorvalds氏は述べた。「だが、モジュール全てで数十メガバイトだ。以前はメガバイトに収まっていたと考えるとショックですらあるよ。カーネルをもっと効率的にして、再び優れたITマシンにしたいと思っている」と続けた。
「しかし、不要なぜい肉を減らすのは難しい。物事は増える傾向にあるから。現実的な話として、20年前のサイズに戻すことは不可能だと思う」とTorvalds氏は述べた。
セキュリティについては、「バグを一掃することはできず、セキュリティは完璧にはなりえない。われわれはコードを非常に慎重に扱おうとしている」とTorvalds氏は述べた。さらに「バグは起こるもので、ユーザーにできることはそれを軽減することだ。オープンソースは非常にうまくいっているが、いつか完全にセキュアになるだろうと考えるのはばかげている」とした。
Zemlin氏は最後に、Torvalds氏が今から10年後のLinuxについて考えていることを尋ねた。Torvalds氏は、「企業は10年後について計画し、その計画はオープンソースを使うというものかもしれない。そのプロセスのすべては非常に前向きだ。しかし私は10年後のことは心配していない。次のリリースやその先のリリースのことを考えている」と述べた。
Jim Zemlin氏とLinus Torvalds氏
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。