Ruby好きのOSSエンジニアがAzureアーキテクトになった理由

羽野三千世 (編集部) 2015年10月23日 07時00分

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 「Linuxが大好き」と銘打つMicrosoftの最高経営責任者(CEO)にSatya Nadella氏が就任して以降、同社はAzureを中心とした同社クラウドサービスとオープンソースとの融合を急進しているように見える。

 Azureは、「Ubuntu」「CentOS」「CoreOS」「Oracle Linux」「SUSE Linux」などの主要なLinuxディストリビューションをサポートするだけでなく、「Hadoop」や「Docker」コンテナなどのオープンソースとも連携。9月には、Azure上のUbuntuでApache Hadoopを利用できるサービス「HDInsight on Linux」が正式リリースされている。

 7月に日本法人の代表執行役社長に就任した平野拓也氏も、過去のライセンス販売ビジネスで築き上げた“Microsoft経済圏”を否定し、「Windowsプラットフォームに閉じていたところを、戦略、オペレーション、組織として変革していく」ことを会見やイベントに登壇するたびに繰り返し強調している。

 その変革の象徴とも言える組織の1つが、2014年7月に日本マイクロソフトのAzureソリューション営業グループ配下に設置された「クラウドソリューションアーキテクト(CSA)」というチームだ。企業がAzureを導入する際にアーキテクチャ作成や技術課題の解決を支援する組織だが、特徴的なのは、外部からオープンソースのバックグラウンドを持つエンジニアが多数参加している点だ。

 CSAの6人目のメンバーとして日本マイクロソフトに入社した「吉田パクえ」こと吉田雄哉氏もその1人だ。

ベンダーニュートラルなエバンジェリストからの転身


日本マイクロソフト クラウド&ソリューション統括本部 Azureソリューション営業本部 Azureソリューション技術部 クラウドソリューションアーキテクト 吉田雄哉氏

 吉田氏は、これまでに、LAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP/Perl/Python)環境でのウェブシステムの受託開発、製造業の情報システム担当者として社内システムの構築、ソフトウェア開発会社でUbuntuやRubyを使用した社内システムの開発と、そのシステムをSaaS化するためのクラウドインフラ構築を手掛けた経歴を持つ。2011年に、同社内で製品のSaaS化プロジェクトを行っていたメンバーを含む4人でスピンアウトしてco-meeting社を創業した。

 co-meetingでは、営業活動の一環として吉田パクえ(ブリックラウドばんじぇりすと)のビジネスネームで、クラウド導入やオープンソース活用に関する講演、執筆活動を精力的にこなしてきた。「Rubyなどのオープンソースを使ったクラウドプラットフォームでの開発とサービス運用経験、クラウドを使う側の情シスとしてのノウハウなど、どのクラウドプラットフォームを使う場合でも共通に必要になる知識を話す人が世の中にいなかったので、自分がやろうと思いました」(吉田氏)

 Ruby好きでオープンソースに詳しく、かつベンダーニュートラルな立場でクラウドのテクノロジを話す講演者として吉田氏は全国から引っ張りだこだった。ピーク時は年間100日以上、それも1日に複数回の講演をこなしていたという。

“Microsoft Loves Linux”の衝撃

 そんな吉田氏が、Azureというプロプライエタリなクラウドプラットフォームに自身のキャリアを収斂させようと思い立ったきっかけは、CEOのNadella氏が2014年10月に打ち出した「Microsoft Loves Linux」のメッセージを目にしたときだという。「長くLinuxを使ってきた私にとって、Microsoftの横にLinuxの文字があることは大きな衝撃でした」と吉田氏。


「Microsoft Loves Linux」のメッセージを掲げるMicrosoft 最高経営責任者 Satya Nadella氏(写真提供:日本マイクロソフト)

 「Nadellaが、これまで特定のアーキテクチャのライセンスビジネスにフォーカスしていた企業戦略をサービスにシフトしました。特にソフトベンダーのMicrosoftとして、開発する人を底上げし、それが社会に波及する価値を重視するというMicrosoftの変化は、外部の開発者だった私の目には誠意あるものに見えたし、将来性を感じました」(吉田氏)

 吉田氏自身が、ちょうど働き方を変えたいと考えている時期でもあった。「ベンダーニュートラルな立ち位置に長くいると、やがてそれぞれの知識が中途半端になってきます。また、クラウド活用の話を突き詰めていくと、テクニカルな話題から離れて、新しい価値の出し方や働き方の変革など抽象的な話になっていきます。“パクえ”の専門性に変化が求められる中で、その延長線上に日本マイクロソフトのCSAというポジションが自然とありました」(吉田氏)

 最終的に、吉田氏の背中を押したのはCSAチームのトップである平野和順氏だ。「CSAチームリーダーの平野には、日本マイクロソフトに入社する2年前に、“パクえ”として初めて有償イベントに呼んでもらった恩があるんです。2012年の『Windows Developer Days』でしたが、そこではAzure上でのRuby開発について講演しました。その平野に“CSAとして活動しないか”と声をかけてもらい、入社を決めました」(吉田氏)

CSAはたくさん話す仕事


 現在はCSAのメンバーとして、Azureを導入するエンタープライズの顧客を技術面でサポートする。Azureのアーキテクチヤレベルでの支援に加えて、異種クラウドプラットフォームからの乗り換えや連携、Azure上でのLinuxメニュー活用などに関するコンサルティングはもちろん吉田氏の得意領域だ。

 「クラウド導入を考えたとき、ユーザーがAzureの個々のメニューに行き着くまでには少し距離があります。そこを埋めるのがCSAの仕事。企業のCIOとディスカッションすることもあれば、情シス部門メンバー全員や、導入企業がアウトソースした先のサポート会社の担当者全員に向けて講義をすることもあります」と吉田氏。技術支援だけでなく、顧客からのリクエストでプレゼンをする機会が非常に多いCSAの仕事だが、年間100日の講演をこなしてきた吉田氏にはお手の物だろう。

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