「ルンバ」を発明したロボット工学者の次なる挑戦 - (page 2)

Hope Reese (TechRepublic) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2015-12-12 06:30

 Harvet Automationはよいスタートを切り、米国各地の30の農場に商品を出荷したものの、この市場の成長は遅かった。このため同社は、倉庫業界に手を広げることを決めた。「2012年には、Amazonが倉庫用ロボットメーカーであるKiva Systemsを7億7500万ドルで買収した。これによって倉庫業界には10億ドル規模の市場が存在することが証明され、多くの人がこの業界に参入している」とJones氏は話す。Harvest Automationの倉庫用新型ロボットも来年発売され、Kiva Systemsのロボットと直接競争することになるとみられている。

 Harvest Automationの設立から8年経って、Jones氏は新たな挑戦を始めることを決めた。同氏はFranklin Roboticsを共同設立し、この会社で小型ロボットに関する取り組みを続けている。今回は、園芸用の小型ロボットを販売する予定だ。

Jones氏自身の言葉

--最近AIの分野では、深層学習が流行しています。その背景にはどんな経緯があったのでしょう。

 深層学習が始まったのは80年代で、学習のレベルが1層ではうまくいかないことが分かった時期でした。

 ある時点で、複数の層のニューロンを設ければいいのではないかという発想が生まれました。これが、ニューラルネットワークと呼ばれるものです。わたしが思ったことは、「人間の学習は何層なのか」ということでした。層を増やせば増やすほど、遅延が大きくなります。ご存じの通り、人間の反応は非常に高速です。しかし、わたしはニューラルネットワークを使いたくありませんでした。システムが写真を間違って判定しても、さらに多くの写真を見せて、正しく判断できているかを調べることしかできません。システムの内部で何が起こっているかは分からないのです。このため、間違った理由を知ることはできず、人気は落ちていきました。この分野ではJann LeCun氏などの数人の研究者が研究を続けており、今ではずっとよくなっています。ほかにさまざまな技術があり、その多くは検索や推論に関わるものですが、深層学習はそれらの技術をすべて打ち負かしました。

--農業では、ドローンとロボットはどういう関係にありますか。

 ドローンの役割の多くは、作物と生育状況に関する情報収集です。上空から見て分かるあらゆる情報を収集します。しかし、地上で何かアクションが必要な場合や、生い茂る葉の下側から観察する必要がある場合は、ドローンは利用できません。そのような場合には、地上で動作するロボットが必要になります。

--今もっともロボットが必要とされている分野は何でしょうか。

 農業には大きなロボットのニーズがあります。国連のレポート「How to Feed the World in 2050」(2050年の世界をいかに養うか)には、地球上の人間すべてに食料を供給するためには、農業生産量を70%を増やす必要があると書かれています。そして、その頃にはそれ以上土地や使用する水を増やすことはできません。農業はもっと効率を上げる必要があるのです。

 Harvest Automationは倉庫業界に重心を移しており、これは企業の判断としては正しいことです。ただ倉庫業界では、ロボットにどこに移動すべきかを指示するために、巨大なソフトウェアシステムを構築する必要があり、わたしはこれに興味がありませんでした。このため、わたしはこの会社で働くのをやめました。Harvest Automationは、大規模農家に大型の製品を販売していました。それに対してわたしは、小型のロボットを園芸家に販売してはどうだろうかと考え始めました。しかし最終的な目標は同じで、農業を支援することです。10年も経てば、ロボットが人間の食料を育てるようになるでしょう。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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