アップルがSwiftのOSS化で狙うもの--GitHubで企業とコミュニティーの連携が進む - (page 2)

可知豊 2015年12月22日 07時30分

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Swiftのオープンソース化は何をもたらすか

 続いて登壇したのは、モバイル向けデータベースであるRealmのテクニカルアドバイザーであり、Swiftに関しても解説記事を公開している岸川克己氏である。岸川氏は、開発者の視点から、今回のSwiftのオープンソース化の重要な3つのポイントを取り上げて解説した。

 まず、1つ目の重要なポイントは、コンパイラと標準ライブラリだけでなく、コアライブラリと呼ばれるソフトウェア群もオープンソース化された点だ。この中には、まだ完全に実装されていない発展途上の部分も含まれているが、従来のApple向けプログラミング言語である「Objective-C」と、その実行環境に依存する部分がなくなった。その結果、Linux上でもSwiftを動作させることが可能になった。

 実際に、Appleは、LinuxディストリビューションのひとつであるUbuntu向けの実行プログラムを提供している。また、IBMの「Swift Sandbox」、日本のオンラインプログラミング実行環境サービス「paiza.IO」などがSwiftに対応している。

プログラミング言語の進化がオープンに変わる

 2つ目の重要なポイントとして岸川氏が取り上げたのが、「Swift Programming Language Evolution」と呼ばれるリポジトリである。ここは文字通り、プログラミング言語の進化の方向性をディスカッションする場所で、次のSwift 3.0の機能について、多くのリクエストが寄せられたり、議論が行われたりしている。

 これまで、Appleの情報は開発者会議や製品発表と同時に、突然行われることが多々あり、アプリケーション開発者は、その情報に急いで追従する必要があった。しかし、Swiftの開発計画や将来の機能などが、このようにオープンになったことで将来の変化に備えることがずっと容易になった。

 「それに加えて、Swiftに対して、“このような機能があれば便利だ”“この点で困っている”といったところを提案して受け入れられれば、Swift自体の変更に誰でも関わることができるようになりました。その評価のプロセスや結果も誰でもアクセスできるオープンなものに変わりました。これは、われわれソフトウェア開発者にとって、とても重要なことだと思います」(岸川氏)

パッケージマネージャでSwiftのエコシステムが発展していく

 3つ目の重要なポイントは、Swift用のパッケージマネージャのオープンソース化だと、岸川氏は語る。

 広く普及しているプログラミング言語は、そのプログラミング言語で共有、再利用できるコードやツール、ライブラリも充実している。多くの高品質で多様なプログラムが登場することで、ソフトウェアの開発を素早く簡単に実現できるからだ。たとえば、Ruby用のアプリケーション開発フレームワークである「Ruby on Rails」も、このようなプログラムのひとつとして登場してきた。

 パッケージマネージャは、このようなプログラムを配布して、多くの開発者に利用してもらうために必要不可欠なツールであり、プログラミング言語のエコシステムの中核になるのだ。

 「パッケージマネージャのオープンソース化は、誰も予測していなかったことだと思います。Apple自身がパッケージマネージャを提供したということは、Swiftを単にiOS/OS Xの専用プログラミング言語ではなく、汎用的に使ってもらいたいという姿勢の表れではないでしょうか。Ruby on Railsのように革新的なものがコミュニティーから生まれる可能性が出てきたという点で重要だと思います」(岸川氏)

AppleがSwiftで目指すもの

 では、このようなSwiftのオープンソース化により、Appleは何を目指しているのだろうか。

 Swiftは、iOSやOS Xのアプリを開発するためのプログラミング言語として登場した。これがなければ、これほど急速に広まらなかったであろう。しかし、Appleは、今後20年間のプログラミング言語のスタンダードとして使われていくことを目指していると、岸川氏は語った。そして、サーバサイドから教育用まで幅広い環境で使われる可能性があると述べた。

 「このような形でSwiftがオープンソース化されたことで、コミュニティーからRuby on Railsのような革新的なフレームワークが生まれて、爆発的に広まることもあると思いますし、iPadやiPhoneでSwiftのコードをコンパイルして実行できるなんてことも夢物語ではなくなっているのです」(岸川氏)

 2016年3月には、世界中のSwiftデベロッパーが東京で一堂に会し、知識や技術を互いに共有し高め合うことを目的とした「try! Swift カンファレンス」が開催される。海外のSwiftのエンジニアたちも日本のモバイル開発エンジニアやコミュニティーに興味を持っているという。ぜひ参加してほしいと岸川氏は述べた。

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