イノベーション賞は、筑波大学の「Bionic Scope」が授賞した。人体の生態情報を利用して中心視野領域を直感的にズームする、視覚機能拡張デバイス・制御インターフェースシステムである。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)に光学30倍ズームのカメラユニットを組み込むことで視覚を鮮明に拡大。コントロールは皮膚表面から漏れ出した筋肉を動かす生体電位信号を読み取るセンサを通じて、視野の拡大や縮小などを行う。そのためハンドフリーで操作できるのが特徴だ。
会場の審査員からはどよめきの声が上がっていた。また、視覚拡張デバイスの制御インターフェースをコア技術として、双眼鏡や顕微鏡などへの応用も考えていると登壇者は説明する。また、ビジネスプランとして最新ガジェットに興味を持つアーリーアダプターへの販売を掲げた。
投入する市場についても、消防隊やレスキュー隊、自衛隊などの公的機関やスポーツ観戦スタジアムなどへの貸し出しを想定。特に後者は施設運営側は観客にレンタルすることで、使用料分だけ中間手数料によるマネタイズを行う。審査員から今後の目標を訪ねられたところ、「広く一般ユーザーに使ってほしい」と回答した。
筑波大学の皆さん
ワールドシチズンシップ賞を受けたのは、鳥羽商船高等専門学校の「SaNaVi」。ちなみに同校は2つのチームがファイナリストとして残っていた。SaNaViは「Safety NaVigator for small boats」の略で船舶事故を未然に防ぐソリューションである。
プレゼンテーションを行った山本龍也氏は、国内で発生する船舶事故が年間2000隻以上、被害者は250人以上にも及ぶ危険性を強調しつつ、船舶に搭載したWindows Phoneが位置情報や方角、スピードをMicrosoft Azureにアップロードし、船舶同士が近づくと警告音及び警告メッセージを表示して、衝突を回避する仕組みを説明した。
同様の事故防止システムとしてAIS(船舶自動識別装置)が存在するが、専門知識の必要性や高額である点や、小型船搭載の義務がなく、日本の小型船総数約50万隻に対して非搭載率は99.8%にも及ぶため、安価な本システムを提案。既に国土交通省海事局や大手損保会社、海上技術安全研究所、大手電機メーカーなどと意見交換を行い、将来的なビジネスにつなげるという。
鳥羽商船高等専門学校の皆さん
また、日本航空アントレプレナー賞が設けられ、Imagine Cup世界大会へチャレンジする1組に対してアントレプレナーカード2人分(5万マイル×2人)が贈られた。