アクセンチュアは4月13日、FinTech投資に関するグローバルの最新トレンドの分析結果を発表した。グローバルでベンチャー企業の財務データ収集・分析業務を行う調査会社CB Insightsが提供するFinTech投資データに基づき、アクセンチュアが独自の分析を加えたもの。
グローバルにおける2016年第1四半期のFinTech投資額は前年同期比67%増の53億ドルに達し、そのうち欧州とアジア・パシフィック地域では前年同期比が約2倍となり、62%を占める結果となった。また、2015年のグローバルにおけるFinTech投資額は、前年比75%増となる96億ドル増加し、およそ223億ドルに達した。
FinTech投資額の推移
市場拡大の理由として、世界最大の市場である北米において、比較的穏やかな成長とはいえ新たに45億ドル(44%増)の資金調達があったこと、中国において前年比445%増となる20億ドル近い資金調達の急成長があったことを挙げている。その他、インド(16億5000万ドル)、ドイツ(7億7000万ドル)、アイルランド(6億3100万ドル)において調達額の大きな伸びが確認されているという。
その他の主な動向は以下の通り。
- 欧州では、2014年から2015年でFinTech投資が2倍以上(120%増)に拡大し、案件数も51%増加。ドイツにおけるFinTech投資は同期間に843%もの増加を示している。
- アジア・パシフィック地域では、2015年のFinTech投資が4倍以上の成長を遂げ、43億ドルに達している。このうちの大部分は中国(19億7000万ドル)とインド(16億5000万ドル)が占める。2016年の第1四半期の投資額は前年同期の4億4500万ドルから27億ドルへと517%拡大し、この伸びのほとんどは中国でのFinTech投資によるもの。
- 北米では、2015年のFinTech投資が44%増加し、148億ドルに達している。中でも米国は投資案件数で16%増の667件となり、引き続き最重要な市場としての地位を維持している。
- また、FinTech市場が成熟するにつれ、グローバルで大規模な案件が増加している。5000万ドルを超える投資案件は2013年の15件、2014年の52件から、2015年には94件に達している。
ディスラプティブ(破壊)か、コラボレーティブ(共生)か
FinTech企業は、主に金融機関をサービスの提供先とする「共生型」と、自ら市場参入し金融機関と競合する「破壊型」に大別されるが、本レポートによると前者の方が優勢になりつつあるという。
共生型のFinTech投資は、2010年にはFinTech投資総額の38%を占めていたが、2015年には44%に拡大している。この6年間において、北米での共生型FinTech投資は、より飛躍的に伸びており、40%から60%に達している。その一方で、欧州では逆に、破壊型のFinTech投資の割合は2010年の62%から2015年には86%に拡大している。
また、いわゆる破壊型FinTech企業が、当初は銀行と競合するものの、最終的には銀行からの出資や買収、提携を通じて銀行との共生に転じるケースが多く見られるという。具体例として、BBVAが出資し、2016年4月にロンドンで開業したモバイル専業銀行であるAtomを挙げている。
共生型FinTech企業向けの投資の割合が高まっている一方で、銀行自身による投資は相対的に少なく、2015年における投資総額223億ドルのうち50億ドルだった。これに対し、銀行によるFinTech関連の内部投資は500億ドルから700億ドルと推定している。